利用規約の文章の書き方の基本:「5W1H」「主語述語」をはっきりと!

どんな文章でもOK?

FAQにもあるのですが、規約を作成するのにあたって、難しい法律の条文みたいな文章で書かなければならないんですか?という質問をよくいただきます。
それに対する答えは「法律の条文のような文章である必要はありません。普段使用しているような文章で書いても問題ありません。」というものなのですが、これには「ただし」が存在します。利用規約を設置する目的があくまでも「リスクを軽減すること」なので、逆にリスクを増幅してしまうような文章の書き方ではいけないのです。

下の例文は、とあるお客様から規約作成のご依頼をいただいたときに資料として提示いただいた規約案の条文なのですが、(どこかのサイトからコピーペーストしたと仰ってましたが・・・)、せっかくの規約なのに文章でリスクが軽減しきれていないと思われるので、悪い例として取り上げさせてもらうことにしました(若干の修正は施してあります)。

日本語の文法に従って、複数の解釈が存在しにくい文章で!

下の条文は何がおかしいでしょう?

例文1:
会員サービスは、会員からの特段の申し出のない限り、会員の有効期限は無期限とし、自動継続されるものとします。

答えは主語が2つあることです。
契約書などでも基本となることですが、「何(誰)は、~~~である。」という形式になっていないと何が言いたいのかわかりにくくなってしまいます。 何が言いたいのか伝わらない、ということは解釈が多様化するということにつながり、その分リスクが大きくなってしまいます。
そんな基本的なこと間違えるほうが悪い、と思われるかもしれませんが、いろいろなサイトの規約の条文を読んでいくと意外にこのミスはよく見受けられます。大手のサイトの規約にも発見したこともありますからみなさん気をつけましょう。

もし上の例を修正するとなった場合、私なら

 会員サービスの有効期間は、当社又は会員からの特段の申し出のない限り、無期限とします。

と修正します。有効期間を無期限とする以上「自動継続」する必要はないので削除&会員資格の喪失事由を会員からの申し出以外にも「当社」の事情によって喪失する場合もある、としておいたほうが運営者にとって都合がよいのではないでしょうか。

権利・義務が絡む場合は「いつ」「誰が」誰に対して」「何を」「どうするのか」を必ず書く

例文2:
本サービスを利用して商品を購入した会員は、商品代金の他、当社が定める手数料及び配送等にかかる送料を支払うものとします。

この条文は何がおかしいでしょう?文章的には何も変な箇所はなさそうに見えますが・・・・。

答えは商品代金と手数料等を「いつ」「誰に対して」「どのような支払い方法で」支払うのかが書かれていないことです。ひょっとしたら「そんな些細なこと・・・」と思うかもしれませんが、これらはトラブルを未然に防ぐためには絶対に必要な項目です。たとえば、代金等を支払ってくれないお客さんに電話したら「今度払うから・・・」とか言われたらどうしましょう。

  1. 本サービスを利用して商品を購入した会員は、当社に対して、商品代金の他、手数料及び配送等にかかる送料を商品購入時に支払うものとします。
  2. 前項の代金等の支払いは、当社が定める手段のうち会員が選択した手段によって行うものとします。

私の場合はひとつの条文をあまり長くしない傾向があるらしいので、このように項で分けるようにしていますが、第2項を「なお」書きにして1項につなげても問題ありません。代金等の支払い手段が複数ある場合には2項のような書き方だと便利です。

今まで規約のリーガルチェックなどの仕事を多くしてきた中で感じるのは、皆さん規約の作成となると難しい表現で書こうとするのか、長くて複雑な文章にしようとする傾向が強いということです。
それでも文法どおりに作成されている分には問題はないのですが、複雑化させすぎて逆に主語述語がめちゃくちゃになり、結局何が言いたいのかわからなくなっている条文が大変多いのが現実です。
それでは逆に大きなリスクを負ってしまいますから、背伸びをせず、まず文法に忠実に書くことを心がけてください。

「他のサイトの規約をコピペしたからその辺は大丈夫」と思っている方も多いと思いますが、他サイトの規約も行政書士や弁護士が作ったもの以外は、あまり信用しないほうがいいのでは、と規約作成の仕事をしていて他サイトの規約をたまに参考程度に探す者として思います。
しかも、私たち行政書士や弁護士は、それが他の「専門家」が作ったものだと大抵すぐに見抜けますが、多くの方がそのような特殊技術(?)は持ち合わせていないでしょうから、コピペの際には自分で作成するとき以上に余計に注意が必要だと思います。

結局は法律っぽい文章に・・・?

上のようなことに気を使いながら規約の文章を作成していくとどうしても堅苦しいという印象の文章になってしまいがちです。

さらに追い討ちをかけるようなことを書くようですが、できるなら法律などで実際に使用されている文章表現や法律用語を用いて規約を書いたほうが、たとえば揉め事になって裁判までいってしまったような場合に、ひとつの文章表現の解釈をめぐっての争いがおきにくい、という点でお勧めできるのです。

ひとつの例として、わたしが行政書士になって初めて契約書の作成業務を行ったときの話をあげたいと思います。 その契約書の作成でわたしは「有効期間の満了日より~~日前までに~~~」という表現を使っていたのですが、その表現をベテランの先生に「有効期間の満了日の~~日前までに~~~」という表現に換えるように薦められました。その理由は、ほとんどの法律が後者の表現で書かれているから、解釈の争いが少ない、というものでした。
「~より」と「~の」のたったそれだけの違いですが、厳密にいうとその満了日を含むのか含まないのか、当事者の意図はどうだったのか、など解釈や判断の違いが生じる可能性があります。人と人との争いごとは得てしてそのような、傍から見ると「そんな些細なこと」から起こるものだと、そのベテラン先生は教えてくださいました。

ですから、わたしとしては、規約を作成する場合にはできるだけ法律に近い表現で作成することを心がけています。

行政書士塩坂壇事務所に利用規約の作成について問い合わせてみる

011-311-5205
(受付時間 平日9:00~17:00)

利用規約の文章の書き方の基本;条文の定め方の工夫

具体的?それとも抽象的?

WEBサイト、特にネットショップなどの現金、商品を扱うWEBサイトでは、リスク回避のためにトラブルが起きそうな事案についてできるだけ詳細に、細かく利用規約を作成する必要があります。しかし、なんでもかんでも規約で定めてしまうとその規約が逆に運営者の首をしめてしまう可能性もあります。

たとえば、サービス内容やそのWEBサイト内で利用できる内容について詳細に規約で定めた場合、将来的にそのサービス内容などに変更があった場合や微調整などを行った場合にも、その都度規約を変更しなければならなくなって しまいます。規約の改定の回数が多くなってしまうのもあまり得策とはいえません。

では、こ の規約の具体性と抽象性をどのようなバランスで考え、解決させたらよいのでしょうか。WEBサイト内のサービス内容などはそのサイトが大きくなったりし た場合に変更したり追加したりする可能性もあります。利用料金なども将来的に変更する場合もあるかと思います。
それらのものを規約という形でまとめるとそのようなサービスの変更や追加のたびに規約を変更しなければならなくなりますが、サイト内でそれらのサービスや利用料金などを規約とは異なる形で定めておいて、規約では次のように定めておくと、いちいちサービスの変更や追加のたびに規約を変更する必要はなくなります。

本サービスの種類、内容、利用料金等は、弊社が別途定めるとおりとします。

代金の支払い方法もたとえば現在は代引きと銀行振り込みのみだけど、将来的にはコンビニ決済やクレジットカード決済なども導入したい、と考えている場合なども次のように定めておけば、決済方法を増やした場合にも同じように規約の変更をせずに済みます。

購入した商品の代金等の支払いは、弊社が指定した手段によって行われるものとします。

これらの規定を設ける場合には同時に次のような条項も設けておくとよりよいでしょう。

 弊社が当サイト内の各サービス上において提示する利用上の諸注意、ガイドライン等が存在する場合、同諸注意等は、それぞれ本規約の一部を構成及び補完するものとします。

「トラブルは相手のせいで起こった」ことにしてしまう文章の工夫

サイト運営者、ネットショップ経営者にとって「規約で親切に忠告してあげたのに守らなかったからトラブルになったんでしょ?だから当社は責任を負わないよ」といえるような条文の書き方ができればそれがベストといえるのではないでしょうか。

例文3:
当社は、本規約の内容を必要に応じ予告なくして改定することができ、会員は、月額サービスを利用する際、その都度、本規約の内容を確認するものとします。 改定後に会員が月額サービスを利用した場合には、改定に同意したものとみなします。 なお、本ページを確認しなかったことに起因する直接または間接に生じた会員及び第三者の損害について、当社は、その内容、態様の如何に係わらず、一切の責任を負わないこととします。

上の条文は規約を変更する際の利用者の同意についての条文です。
この条文では、利用者(会員)にこのサイトを利用するたびに利用規約を確認するように定めて、それを怠って「利用規約を変更したなんて知らなかった」といっても当社は知りませんよ、ということにしています (経済産業省の見解では、この規約の変更と利用者の同意については、この条文だけでは不完全とみなされるので、もう一工夫必要になりますが・・・)。

「みなし規定」というテクニック

WEBサイトを訪問者に利用してもらう際の注意事項、守ってもらわなければならないルールを不特定多数の「予期せぬ訪問者」に同意させる(させるように仕向ける)ためにもっとも有効なのが規約における「みなし規定」という書き方です。
つまり、「このサイトを利用するということはこの規約に同意している」ということにしてしまうのです。

この「みなし規定」は特に訪問者のグループのうち「閲覧者」に対して規約に同意させる(ように仕向ける)際に有効な手段となります。 上であげた例文3もみなし規定を使った例の一つといえます。

この「みなし規定」は会員IDやパスワードを利用する会員制サイトの本人確認にも応用できます。

「弊社は、特段の定めがない限り、入力されたログインID及びパスワードが登録されたものと一致することを弊社が確認した場合、当該利用が会員本人による利用であるとみなします。」

この例のような条文があることによって、キャッシュを利用してパスワード等を管理している会員のPCの第三者利用を「会員本人による利用」とみなすことができるので、そのようなクレームに対する防御策になります。

ただし、この「みなし規定」は前提となるほかの条項がしっかりと定められていなければあまり大きな効果は期待できません。たとえば、上の会員規約でのみなし規定では、他の条文で会員の「IDやパスワードの管理義務」の規定を定めた上で、会員に対する禁止事項として「ID・パスワード等の管理義務違反」に ついて定めておくことによってはじめて上のみなし規定がより有効な防御策になるのです。

また、このみなし規定についてはリーガルチェックをご依頼のお客様の準備する規約でもよく見かけるのですが、とにかく主語を間違えている例が大変多く見受けられます。

たとえば「ユーザーが本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなされます。」

といった場合には、「みなす」のはサイト運営者で、「みなされる」のはその申込をしたユーザーということになります。ですから上記の条文の主語は「ユーザーは」になり、ということは「ユーザーは、本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなされます。」となります。
逆に「みなします。」を使う場合には「当社は、ユーザーが本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなします。」となります。

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利用規約の文章の書き方の基本;利用規約における「権利・義務」の定め方

サイト内での運営者・ユーザーの権利・義務の定め方

わたしはこれまでリーガルチェックサービスなどでさまざまなサイトの規約をチェックしているのですが、「チェックしてくれ」という規約の多くが、この「権利」「義務」の定め方がしっかりできていないというのが実情です。
中には一日のアクセス数が数千・数万ある、という有名サイトの規約もありました。

この権利・義務に関する定めがしっかりとできていなければ、サイトの運営上非常に大きなリスクを負ってしまうことになります。

実際、その有名サイトでもクレームや苦情が多いとのことでしたが(アクセス数が増えるとそれはしょうがないことなのですが)、残念ながらそのようなクレームや苦情に対する規約での防御というものがきちんとできていませんでした。
(そのサイトのオーナーさんはその増えてきたクレーム等への防御策として規約の見直しを考えたようです。)

権利と義務の書き方

規約の条文で「権利」「義務」を定める前に、そもそも「権利」と「義務」とはなんぞや?というところから説明してみましょう。

まず、権利とはそのサイト内で「できること」になります。ですから条文では「会員は、~~することができます。」のような書き方をすることになります。

対して、義務とはそのサイト内で「しなければならないこと」「してはならないこと」のことです。条文では「会員は、~~しなければなりません。」とか「会員は、~~してはなりません。」のように定めることになります。

これが権利と義務の書き方の違いです。・・・というと「なんだ、そんなの当たり前じゃん」という声も聞こえてきそうですが、条文の書き方としては違いはこれだけです。

権利と義務の違い

しかし、権利と義務には決定的な違いがあります。それは、「義務」には「違反した場合の罰則が伴う」ということです。

今までリーガルチェックをしてきた中でもっとも多いのは、この「しなければならないこと」「してはならないこと」に対する罰則規定がかけられていない、というものです。

もし、ご自分で規約を作成した(コピーペーストも)という方は今一度その規約を確認してみてください。
たとえばサイト内での「禁止行為」についての定めはありますか? 罰則規定の条文はありますか?
罰則規定に「~条(禁止事項)に違反した場合に~~する」という内容のものはありますか?

「義務」と「罰則」はきちんと連動していなければ、それだけで大きなリスクを負ってしまうことになります。

権利と義務の定め方

ここまで規約内での権利と義務について説明してきましたが、それらの定め方には、一定の法則というものがあります。

それは、会員(サイトのユーザー)の行動について定める場合には、「義務」が多くなり、運営者の行動について定める場合には「権利」が多くなる、ということです。

例として会員制サイトへの入会の場合をあげてみましょう。
まず、会員に対しては

本サービスへの入会希望者は、申込方法等について当社からの指示等がある場合、当社からの指示等に従わなければなりません。

次にそれに対する罰則

当社は、入会希望者が入会申込に際して当社からの指示等に従わない場合、当該希望者の入会を拒否することができます。

権利と義務の定め方についてはこの二つで十分すぎるほど説明できているのではないでしょうか。
要は、ユーザーにはサイト内でのルールには従ってもらわなければならないのですから「義務」として定め、たとえば罰則規定など運営者側の行為は、「(してもしなくてもいい)権利」として定める、という方法をとると、リスクの少ない規約ができあがるのではないかと思います。

規約では「定義」も大切

リーガルチャックをしていて、よくある例の一つに、今まで使われていなかった用語が突然なんの前置きもなく出てくるということがあります。

例を挙げると、それまではサービスを利用するユーザーのことを「会員」と書いていたはずなのに突然「甲は~」などに変わっていたり(文脈などから考えても【会員=甲】なのですが)、「本サービス」「当サービス」「本契約」、・・・・など、ひとつの規約でいくつのサービスについて定めているのやら・・・・と思ってしまう例や、突然「本ソフトウェアの使用は~」と切り出されてみたり、読んでいる人間からすると、「いや、まず【本ソフトウェア】ってどれのことだ?」と思う例が本当にたくさんあります。

まぁ、大体が・・というよりすべての例がどこかのサイトや契約書からコピーペーストしてそのまま使っているのでしょうが、はっきりいってそれではリスクはまったく消せていません。
コピーペーストで作成するなとは言いませんが、せめて規約を最初から最後まで読んでからサイトに掲載してください、というアドバイスしか残念ながらできません。

用語の定義の仕方は2種類ある

規約で使用される用語を定義するやり方は主に2種類あります。
一つ目は、「用語の定義」という条文を作るやり方です。 この方法では大体規約の第1条か2条あたりで定める場合がほとんどです。

本規約において「会員」とは、当社と本サービスの利用契約を締結し本サービスを利用する者をいいます。

大体こんな感じで定義していく場合が多いでしょうか。

二つ目は、文章中で出てきた用語について「次からはこれは【~~】ということにしますよ」と定めるやり方です。 この場合は以下のように設定していきます。

 本規約は、株式会社○▲■(以下「当社」という)が運営する「××××」(以下「本サイト」という)において提供される各種会員向けサービス(以下「本サービス」という)をご利用いただく際の、本サービス利用者(以下「会員」という)と当社との間の一切の関係に適用されます。

この条文の場合だと、この条文ひとつで「当社」「本サイト」「本サービス」「会員」の4つの用語の定義ができていることになります。

私の場合は、下のやり方で定義していく場合が多いのですが、ソフトウェアの販売規約など、ちょっと特殊な用語が多い場合だと上のやり方で定めていく場合もあります。
その辺はケースバイケースですね。

この定義については、冒頭でも触れましたが、新たな用語が突然、何の前触れもなく出現する場合が非常に多いので、その辺は注意するように心がけてください。 たとえば入会に関する条文での「希望者は~」などがよく見かけるものですね。
「希望者は~」であれば「本サービスの利用を希望する者(以下「希望者」という)は~」と定めるようにします。 このように初回に出てくる用語はきちんと説明するようにしましょう。