【利用規約の書き方】利用規約の文章の書き方の基本1


どんな文章でもOK?

 FAQにもあるのですが,規約を作成するのにあたって,難しい法律の条文みたいな文章で書かなければならないんですか?という質問をよくいただきます。
 
それに対する答えは「法律の条文のような文章である必要はありません。 普段使用しているような文章で書いても問題ありません。」というものなのですが,これには「ただし」が存在します。 利用規約を設置する目的があくまでも「リスクを軽減すること」なので,逆にリスクを増幅してしまうような文章の書き方ではいけないのです。

 下の例文は,とあるお客様から規約作成のご依頼をいただいたときに資料として提示いただいた規約案の条文なのですが,(どこかのサイトからコピーペーストしたと仰ってましたが・・・),せっかくの規約なのに文章でリスクが軽減しきれていないと思われるので,悪い例として取り上げさせてもらうことにしました(若干の修正は施してあります)。

利用規約の書き方の基本その1

日本語の文法に従って,複数の解釈が存在しにくい文章で書く。」

例文1:
 会員サービスは,会員からの特段の申し出のない限り,会員の有効期限は無期限とし,自動継続されるものとします。

 この条文は何がおかしいでしょう?

 答えは主語が2つあることです。
 契約書などでも基本となることですが,「何(誰)は,~~~である。」という形式になっていないと何が言いたいのかわかりにくくなってしまいます。 何が言いたいのか伝わらない,ということは解釈が多様化するということにつながり,その分リスクが大きくなってしまいます。
 そんな基本的なこと間違えるほうが悪い,と思われるかもしれませんが,いろいろなサイトの規約の条文を読んでいくと意外にこのミスはよく見受けられます。 大手のサイトの規約にも発見したこともありますからみなさん気をつけましょう。

  もし上の例を修正するとなった場合,わたしなら

 会員サービスの有効期間は,当社又は会員からの特段の申し出のない限り,無期限とします。

と修正します。 有効期間を無期限とする以上「自動継続」する必要はないので削除&会員資格の喪失事由を会員からの申し出以外にも「当社」の事情によって喪失する場合もある,としておいたほうが運営者にとって都合がよいのではないでしょうか。

利用規約の書き方の基本その2

代金支払いや商品引渡しなど,権利・義務が移転する事項については「いつ」「誰が」誰に対して」「何を」「どうするのか」を必ず書く必要がある。

例文2:
 本サービスを利用して商品を購入した会員は,商品代金の他,当社が定める手数料及び配送等にかかる送料を支払うものとします。

 この条文は何がおかしいでしょう? 文章的には何も変な箇所はなさそうに見えますが・・・・。

 答えは商品代金と手数料等を「いつ」「誰に対して」「どのような支払い方法で」支払うのかが書かれていないことです。 ひょっとしたら「そんな些細なこと・・・」と思うかもしれませんが,これらはトラブルを未然に防ぐためには絶対に必要な項目です。 たとえば,代金等を支払ってくれないお客さんに電話したら「今度払うから・・・」とか言われたらどうしましょう。

  1. 本サービスを利用して商品を購入した会員は,当社に対して,商品代金の他,手数料及び配送等にかかる送料を商品購入時に支払うものとします。
  2. 前項の代金等の支払いは,当社が定める手段のうち会員が選択した手段によって行うものとします。

 私の場合はひとつの条文をあまり長くしない傾向があるらしいので,このように項で分けるようにしていますが,第2項を「なお」書きにして1項につなげても問題ありません。 代金等の支払い手段が複数ある場合には2項のような書き方だと便利です。

 今まで規約のリーガルチェックなどの仕事を多くしてきた中で感じるのは,皆さん規約の作成となると難しい表現で書こうとするのか,長くて複雑な文章にしようとする傾向が強いということです。
 それでも文法どおりに作成されている分には問題はないのですが,複雑化させすぎて逆に主語述語がめちゃくちゃになり,結局何が言いたいのかわからなくなっている条文が大変多いのが現実です。
 
それでは逆に大きなリスクを負ってしまいますから,背伸びをせず,まず文法に忠実に書くことを心がけてください。

 「他のサイトの規約をコピペしたからその辺は大丈夫」と思っている方も多いと思いますが,他サイトの規約も行政書士や弁護士が作ったもの以外は,あまり信用しないほうがいいのでは,と規約作成の仕事をしていて他サイトの規約をたまに参考程度に探す者として思います。
 しかも,私たち行政書士や弁護士は,それが他の「専門家」が作ったものだと大抵すぐに見抜けますが,多くの方がそのような特殊技術(?)は持ち合わせていないでしょうから,コピペの際には自分で作成するとき以上に余計に注意が必要だと思います。

結局は法律っぽい文章に・・・?

 上のようなことに気を使いながら規約の文章を作成していくとどうしても堅苦しいという印象の文章になってしまいがちです。

 さらに追い討ちをかけるようなことを書くようですが,できるなら法律などで実際に使用されている文章表現や法律用語を用いて規約を書いたほうが,たとえば揉め事になって裁判までいってしまったような場合に,ひとつの文章表現の解釈をめぐっての争いがおきにくい,という点でお勧めできるのです。

 ひとつの例として,わたしが行政書士になって初めて契約書の作成業務を行ったときの話をあげたいと思います。 その契約書の作成でわたしは「有効期間の満了日より~~日前までに~~~」という表現を使っていたのですが,その表現をベテランの先生に「有効期間の満了日~~日前までに~~~」という表現に換えるように薦められました。 その理由は,ほとんどの法律が後者の表現で書かれているから,解釈の争いが少ない,というものでした。
 「~より」と「~の」のたったそれだけの違いですが,厳密にいうとその満了日を含むのか含まないのか,当事者の意図はどうだったのか,など解釈や判断の違いが生じる可能性があります。 人と人との争いごとは得てしてそのような,傍から見ると「そんな些細なこと」から起こるものだと,そのベテラン先生は教えてくださいました。

 ですから,わたしとしては,規約を作成する場合にはできるだけ法律に近い表現で作成することを心がけています。

元裁判所書記官を父に持つ苦悩(?)

 これは私が行政書士になりたての頃の話です。

 行政書士になってしばらくして利用規約作成のお仕事が舞いこんできました。 ところが,その当時,私が行政書士の仕事の中で「一番やりたくない仕事」がこの契約書作成のお仕事でした。

 そこで,「契約書の雛形」が載った本を何冊か買い,その中で「WEBサイト利用規約雛形」というのがあったので,それと他の契約書雛形で使えそうなものを集めて,丸写しして利用規約を作成し,私の父にチェックをしてもらいました。 

 私の父は退職前,裁判所の書記官の仕事をしていました。 裁判所の書記官の主な仕事のひとつに「裁判などの調書作成」というのがあるようです(私に書記官の経歴はないので)。
 裁判所が使う調書ですから,当然「解釈の相違」などが生じないように,文章もしっかりと作成されるはずです。 つまり,父は「解釈の相違が置きにくい(リスクの少ない)文書作成」のスペシャリストということがいえるかと思います。

 そんな父にチェックしてもらった,雛形丸写しの利用規約ですが,結果は白黒の箇所が見当たらないほど赤ペンでまっかっかに修正されて戻ってきました(涙)。 あげくに,
父:「お前もうちょっと文章の組み立て考え直したほうがいいぞ。 お金もらってこんなへたくそな文章提示したんじゃ失礼だろ」
私:(いや,これ本の丸写しだし・・・・)

 その日以来,こんな歳になって,父によるスパルタ教育が始まりました。
 そのおかげもあり,今日,当事務所の主力業務はこの利用規約作成ということになりました。
(もともと,PCが普及する以前からコンピュータ大好き,インターネットの利用も早かったほうなので,その辺の知識はそれなりに持っていたので)
今では,私のもっとも得意な行政書士業務も利用規約を含めた契約書作成です。
 ですから,当事務所作成の利用規約は,解釈の相違のできにくい文章を使用し,リスクの少ないことが最大の売りです。

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