利用規約の著作権について


そもそも利用規約に「著作権」は存在するのか?

 結論から先に述べますと,利用規約にも著作権は存在すると考えられます。

 ところが,利用規約の書き方についてのWEBサイトやヤフー知恵袋や教えてgooなどではよく「利用規約には著作権はないからコピーペーストで利用規約を作っても問題ない」などという記事がちらほら見受けられます。

 さらには,「著作物」について「ウィキペディア」で調べてみると,「規約」は著作物には含まれない,と書いてある箇所があります。
 
しかし,この箇所でいう「規約」とはプログラムの著作物に関しての,プログラム上の約束事のことであり,WEBサイトのルールを定める「利用規約」とはまったく異なる性質のものだと考えることができます。

利用規約は作成する人によって千差万別

 WEBサイトの利用規約は,そのサイトに潜むであろうリスクについて,そのリスクを防ぐ目的で作成するものです。
 このサイト上のリスクについて,たとえばひとつのサイトについて複数の人に潜むリスクを挙げてもらうとすると,複数のリスクが挙がる場合が多くなるのではないかと思います。
 中には誰も思いもよらなかったリスクに気づいて指摘してくれる人もいるかもしれません。

 また,そのリスクをどう防ぐか(条文をどうするか)についても千差万別の解決方法があると思います。
 
条文をできる限りあいまいにして,「別途協議」などとすることで少ない条文で多くのリスクを回避しようとする場合も考えられます。
 逆にこれでもかというほど条文を細分化して,もう潜むリスクなんて考えられない,というぐらいに多くの条文を用意する方法もあります。

 このように利用規約を作成するためには,サイト上のリスクに対しても,解決方法についても作成者の「思想」が存在して,それを「創作活動」によって表現しなければならない,ということができます。

 著作権法では著作権法で保護される「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって・・・・」と定めていますから,WEBサイト利用規約は当然「著作物」である,と考えられます。

法律や判決文などには著作権は存在しない?

 ところが,同じく著作権法には,法律の条文や裁判所の判決文などには「著作権は存在しない」という定めもあるので,似たような表現で書かれることが多い「利用規約」にも著作権は存在しない,と勘違いする人も多いのではないかと思われます。

法律や判決文は国や地方公共団体,裁判所などの公共機関が作成するもので,そのようなものには著作権は存在しない,とされています。
 利用規約は公共機関が作成するものではありませんから,著作権が存在しないということにはなりません。

予期せぬトラブルが起こったら「別途協議」の落とし穴

  日本語で書かれた利用規約や契約書でよく見かける
○○と当社との間で紛争が生じた場合,双方は,ともに誠意をもって協議するものとします。
という条文,大変便利なものでわたしも作成する規約のどこかには必ず入っているのですが,実はこの条文,海外ではほぼ役に立たない条文だということを知っておいたほうがよいかと思います。

 日本人にとって「誠意をもって協議する」とは,「大事にならないように(裁判沙汰になんてしないように)お話し合いで丸く解決しましょうよ」という意味がこめられています(と考えられます)。

 ところが海外の人(特にアメリカ人)にとって,「誠意をもって」=「弁護士(代理)を立てない」&「裁判沙汰にしない」という等式は成立しないことが多いのです。 彼らにとって「誠意をもって協議する」手段として弁護士を立て,その協議を行う場所が裁判所である可能性が高いと考えることができます。

 
そのような人たちに上のような条文は「日本人的には」意味のないものです。 ですから,海外の契約書や利用規約はこれでもかというほど具体的で,これ以外にトラブルなんてあるはずもないというぐらいさまざまなケースを想定して作成されている場合がほとんどです。

 ところが,逆に日本の契約書や利用規約は,この条文があるせいか,けっこう大雑把で抽象的な表現で書かれていることが多いかと思います。

 どちらがいい,というのは人それぞれ考え方の違いもありますが,わたしは,特にネットビジネスを行う際のさまざまな規約はより前者に近い,さまざまなトラブルやクレームを想定してより具体的な表現で書かれるべきだと思っています。

 というのも,ネットビジネスというのは全世界中の人たちを相手にする可能性があるからです。 うちのサイトは海外の人は相手にしないよ,といってもそのサイトは全世界中に公開されているわけですから,海外から突然注文が入る可能性だってあります。
 そのようなとき規約に「海外との取引は行わない」旨の記載があれば,それだけでトラブルのひとつは確実に消すことができていることになります。

 わたしも「別途協議」の条文はよく使用しますが,それでも規約作成を請け負った場合はできる限り具体的な表現を使用して条文を細分化して規約を作成するよう心がけています。

コピーペーストする場合はせめてサイト管理者に一報を

  利用規約に著作権が存在するということは,そのサイトの管理者に内緒でコピーペーストや複製することは著作権侵害になってしまうの?ということになります。

 閲覧を目的としたコピーであれば著作権侵害には当たらないかとは思いますが,コピーペーストしてネット上に公開することを目的とするのであれば,やはり著作権侵害ということになってしまう可能性が高いかもしれません。

 ですから,利用規約をコピーペーストする場合には,そのサイトの管理者に最低限のご挨拶はしたほうがよいのではないでしょうか。

他サイトのコピーペーストで問題ない?

 もし仮にサイト管理者から利用規約のコピーペーストを許諾してもらったとしても,その条文が自分のサイトにとって有益なものでなければなんの意味もありません。

 ここではその利用規約のコピーペーストを認めてもらったあとの問題点について述べていきたいと思います。

そのサイトにあった規約を準備できるか?

 ネットショップなど利用規約を作成する目的は前のページで述べたとおり,サイト内や事業を行っていく上で生じるリスクを未然に回避するというものです。 ですから,そのサイト,事業形態にあった規約を準備できなければ,仮に規約があったとしても逆にその規約が自分のサイト,事業の首を絞めていくことになりかねません。

しっかりした規約=有益とは限らない

 たとえばほぼ同じ業種の,取り扱っている商品もほぼ同じ大手サイトの利用規約を流用したとします。 大手サイトですからしっかりした規約を弁護士や行政書士に依頼して作成している可能性が高いでしょうから,規約の条文などにも信頼性があるでしょうし,扱っている商品も同じであれば大きな問題もないはず・・・と考えるのはある意味当然ではないでしょうか。 
 
しかしそこには大きな落とし穴が待っているかもしれません。  もしも流用元の大手サイトがクレーム対応でどんなことでも自分たちが損をしても顧客のいうことを聞くように規約を設定していた場合,流用した自分の会社やお店の体力をどんどん消耗していってしまう可能性だってあります。 まったく逆の規約を流用元が設定していた場合は流用した自分たちが顧客からの信用を失っていくことになるかもしれません。

重要なのは自分のサイトに合っているかということ

 逆に経営規模や展開形態の似たような(似たようにみえる)会社で,取り扱う商品などがまったく異なる場合,その規約を流用できるでしょうか?
 答えは「NO」です。 たとえば小瓶に入ったサプリメントを販売するネットショップ,パンなどの食品を扱うネットショップ,ガラス細工などを扱うネットショップの3つがあったとします。 これらの3種類のネットショップに潜んでいるリスクは同じでしょうか? 配送方法や支払いについてのリスクはさほど変わらないと思いますが,瑕疵担保(欠陥品などについての取り扱い)や返品,返送等についてのリスクとそれに対する条文はまったく異なるはずです。

 このように,もし他サイトの規約の条文をコピーペーストで用いる場合にも,実際に自分のサイトできちんと機能してくれそうかどうかについて考える必要があります。 しかし,他サイトの利用規約をコピーペーストする場合には,次のようなリスクを背負うことになるかもしれないことを理解する必要があります。

重要な「対となる条文」を見落とすリスク

会員制サイトのID・パスワード管理の例

 利用規約では,複数の条文でひとつのリスクを回避している場合があります。 よく引き合いに出すのが,「会員資格の管理」についての条文です。 たとえば,以下のような条文があったとします。

1. 当社は,会員登録を行った利用者に対して,ログインID及びパスワードを発行します。 会員は,同ログインID及びパスワードの管理を自己の責任において行わなければなりません。
2. 当社は,特段の定めがない限り,入力されたログインID及びパスワードが前項の登録されたものと一致することを当社が確認した場合,当該利用が会員本人による利用であるものとみなします。

 わたしが会員制サイトの規約を作成した場合,この2つの条文だけではなく,別な条項でもっと突っ込んだ取り決めをする場合がほとんどです。
たとえば「免責」について定めた箇所で会員IDやパスワードの第三者利用についての「当社」の免責について定めたり,「会員資格の譲渡,貸与等」を定めた箇所で会員資格の譲渡・貸与を禁止する旨定めたり,「禁止事項と罰則」の箇所でIDやパスワードを譲渡・貸与した場合の罰則を定めたり・・・。

ネットショップの所有権移転時期の例

 また,違う例としてわたしが規約作成の依頼で体験した話をあげたいと思います。
 
わたしが初めてネットショップの利用規約の作成を依頼されたとき,そのお客様から次のような条文を加えてほしいと要望されたことがあります。 そのお客様は似たような商品を販売している他サイトにこのような条文があるから・・とおっしゃっていました。

 購入した商品等の引渡しについて,同商品等に関する紛失のリスク及び所有権は,当社が同商品等を配送業者に引き渡した時点でお客様に移転するものとします。

 この条文,法律をちょっとかじった人間からすると「ちょっと変な条文」ということになるかと思います。
 
実際わたしもこのお客様に「この条文だけではお客様が逆に大きなリスクを負うことになりますよ」とお伝えしました。 そうするとお客様はわたしにURLを教えてくれて「ここに出ているからそのようにしてほしい」とお答えになりました。(どのようなリスクを負うことになるのかについては「規約と法律との関係 その1」のページで)

 その2~3日後,ちょっとした機会からわたしがとある大手ネットショップの規約から同じ条文を発見しましたが,そのサイトの規約にはわたしが先日お客様に「リスクだ」と伝えた箇所についてのリスク回避の条文がありました。
 わたしはそのあとお客様から教えていただいたサイトの規約をもう一度見直しましたが,やはりその規約にはそのもうひとつのリスク回避の条文はありませんでした。

 あくまでもこれは私の予想ですが,そのお客様から教えてもらったサイトの管理者が大手サイトの規約を見てこれは便利だと思ってコピーペーストしたのだと思います。 ところが,その対ともいうべき条文にまでは目が届かなかった,というのが真相ではないでしょうか(その大手サイトの規約は膨大なもので,上の条文とその対になる条文が別なページに書いてありました)。

 結局,当然のことながらわたしはそのお客様の取り扱っている商品にあった形の「対になる条文」を作成しなおして上の条文とともにお客様の利用規約内に設置したのですが,そのときのお客様も「自分でコピペしていたらそんなリスクがあること自体考えもつかなかった・・・」としみじみおっしゃっていました。

 このように,規約では,あるひとつの規定を補完する規定がまったく違う場所にある例が多々あります。 それらを見落とすことで,逆にリスクを負ってしまうことも多々あります。

結局コピーペーストで規約を作成してよいのか?

 わたしの考えですが,次のような条件がそろうのであれば,利用規約を作成する際,ほかのサイトの利用規約の条文をコピーペーストして利用規約を作成してもよいかと思います。

  • コピーペーストしようと思う規約の持主(サイト管理者?)から許諾を得ている。
  • 自身が法学部出身又は法律に詳しい知人から意見を聞くことができる
  • 本人又は法律に詳しい知人がインターネットやコンピュータにも精通している。
  • 条文の意味や目的,欠点等を理解し,欠点等に対応する条文を準備できる。
  • 対応する法律等との整合を図ることができる。

 あまり法律に詳しくないという人は,コピーペーストして規約を作成した場合にはできることなら法律に詳しい方,さらにはネットビジネスにも精通した方にチェックしてもらうようにしたほうがよいかと思います。

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