【利用規約の設置】 設置の仕方によっては規約が「無効」に?


電子商取引等に関する準則

 電子商取引等に関する準則(経済産業省HPへ,リンク先よりpdfファイルダウンロード可、平成27年4月に改定されました。)は経済産業省がネットショップやインターネットオークションなどインターネットを介した商取 引の発達に伴い,その取引にどのように民法や消費者契約法,特定商取引法などのさまざまな法律上の原則を適用していくのかについてのガイドラインを示した ものです。

 その準則の中では,サイト利用規約を契約の相手方(サイト利用者)に契約条件の一 部として認識させ,同意させるためにはどのように規約を設置するのが好ましいか?という問題をはじめとして,未成年者による申込の取消権の行使などのトラブルに巻き込まれにくい申込画面の作り方や買い物かごから決済までの取引画面の誘導の仕方などについて,実務に即した形で説明されています。

どんな場合に規約が「無効」にされてしまうのか?

 もしトラブルを回避するために設置した利用規約が,実際のトラブルが起こってそれが裁判にまで発展してしまったときに「利用規約としての効果はありません」と言われてしまったらどうしましょう?
利用規約の設置の仕方によってはこのようなことが実際に起こってしまうかもしれません。 電子商取引等に関する準則の中では,サイト利用規約がサイト管 理者と利用者の間で締結した契約条件の一部として認められないと判断されてしまう場合があると述べられています。

 準則で「原則として利用規約に法的効力は認められないと考えられる」利用規約の設置方法として,

サイト利用規約へのリンクボタンがサイト内の目立たない場所に小さく表示されているに過ぎない場合

があげられています。
 その理由として,サイト管理者と利用者が契約を締結するような場合,双方が契約条件に同意する必要があるわけですから,その条件が見難い場合や契約の当 事者(利用者)がその存在に気づかないであろう場合には,それを契約条件として法的効力を持たせることには疑問が残る,というものです。

 この準則の考え方に基づくと,準則の中ではあげられていませんが,次のような規約の設置の仕方も規約の法的効力が認められないケースとして考えられるのではないでしょうか?

サイト利用規約へのリンクが,一部のページからしか貼られていない場合や,深い階層のページからしか利用規約までたどり着けないような場合

強行規定に反する規約の条項は無効にされてしまう場合がある?

 強行規定とは法令の規定のうちで,それに反する当事者間の合意があったとしてもそれを無効にして適用される規定のことです。 たとえば民法の公序良俗規定などが代表例としてあげられます。

 ネットショップ経営者が特に注意しなければならないのが,消費者契約法10条の条文でしょう。 この条文では「消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。 」と定められています。  この条文で無効にされてしまう可能性のある条文としては,たとえば

退会手続きを行った会員に対して,月額料金の返還は,理由の如何を問わず一切行わないものとします。

のようなものがあげられるかと思います。

 単純にこの条文自体が無効ということにはならないのかもしれませんが,たとえば12ヶ月分の「月額料金」をまとめて支払った「会員」が1ヶ月目で退会したような場合,この条文どおりでは「消費者が著しく利益を損なっている」状態とみられてしまうのかもしれません。

 消費者契約法などの消費者保護の観点から制定された法律にはこのような強行規定が多数存在するので,ネットショップの運営者などは規約の作成時にこれらの法律を熟読しておくことをお勧めします。

【利用規約の設置】 利用規約だけではリスクをなくすことはできない?

利用規約+フォームやボタン,決済画面全体の流れでリスク軽減

 どんなに利用規約で完璧というほどリスクマネージメントをしても,それだけではネットショップやネットオークションで起こりうるトラブルのリスクを回避することはできません。 
 
準則では,利用規約の整備だけでなく,各種申込の流れ全般やフォームで入力させる内容,ボタンの工夫などサイト内の取引にかかわる箇所全体でのリスクマネージメントが求められています。

 では,規約だけでは防ぎきることができないであろうインターネット取引で起こりうるトラブルにはどのようなものがあるか例をあげてみましょう。

ケース1) 未成年者による取引

 インターネット取引の最大の特徴の一つでもある「取引相手の顔が見えない」ということから起こりうるトラブルの第一といって もよいのではないでしょうか? 通常の取引であれば実際に会って,顔や態度などで未成年かどうかを見分けることができますが,インターネット取引ではその ようにはいきません。

 未成年者が保護者の同意なく取引を行った場合,「取消権」を行使することができ,取引権が行使されるとその取引が「なかったこと」されてしまう可能性があります。 
 
事業者にとって取引自体を「なかったこと」にされてしまうのは大変なリスクではないでしょうか?

 このようなリスクを回避するため,規約+年齢認証を設けましょう。(それでも完璧にリスク回避ができるわけではありませんが,規約だけor年齢認証だけor何もないよりははるかに効果が期待できます。)

ケース2) 利用者の「間違い」や「勘違い」による取引

 利用者が操作を誤って取引を完了してしまった場合や「無料だと思っていたのに」有料サービスに申し込んでしまった場合も,そ の主張が認められれば「錯誤による意思表示」ということになり,民法95条によってその取引は「無効」つまり「なかったこと」にされてしまう可能性があり ます。

 こうしたトラブルを防ぐ目的で電子契約法という法律で事業者には「確認措置」を義務付けています。 買い物かごや申し込みフォームなどでは必ずこの確認措置を講じるようにしましょう。
この確認措置を利用者にもわかりやすい形で確実に行っていたにもかかわらず,利用者が「間違えた」場合は事業者は取引成立を主張することができる可能性が高くなります。

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