2020年の民法改正によって新たに「定型約款」という制度と利用規約との関係について解説していきます。

利用規約と民法の「定型約款」の関係

定型約款という制度は、2020年の民法改正で新たにできました。

定型約款については民法第548条の2で

第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

と定めています。

法律の条文なんて読むのもいやだという方も多いと思います(かくゆう私もです。)ので簡単にかみ砕いて説明します。

民法第548条の2の要約

まず、ネットショップでの売買契約や会員制サービスの利用など、運営者が複数の利用者に対して画一的に提供するサービスを「定型取引」といいます。

この定型取引を行うことに双方が合意した場合(これを定型取引合意といいます。)には、「一または二の条件で定型約款(利用規約と読み替えます。)に記載されている個別の条件にも合意しているものとみなします。」ということになります。

おそらくかみ砕いても訳が分からないと思います。(私も何度も読み返してようやくなんとなく理解できたかなって程度です。)

なので、ネットショップを例にして説明します。

ネットショップの例

例としてネットショップでの商品の購入について取り上げてみます。

「通常の買い物かご機能などのシステムを使って商品を購入する。」という定型取引で商品を購入した場合、利用者は取引画面上の条件(商品の名称や数量、購入代金、送料負担など。)のみに同意して商品を購入した形になります。

この状態が「定型取引合意」になります。

この状態は「商品を購入することには合意したが、利用規約には合意したかどうかは確定していない。」という状態と考えられます。

たとえば、デジタル商品などでその商品の使用条件などが取引画面上に記載されていれば問題なく、商品の購入時に利用者がその使用条件に同意したと考えられます。

しかし、取引画面上では表示されずに、利用規約上のみに記載がある場合、「利用者がその使用条件にも合意した。」と判断されるためには、条文の一「利用規約を契約内容とすることに合意する。」か、二「利用規約を契約内容とすることを運営者がサイト上に表示している。」必要があるということです。

まとめると、「利用規約を契約内容とすることに同意してもらう。」または「サイト上などに利用規約を契約内容とする旨を提示しておく。」ことが利用規約が定型約款として扱われるためには重要ということになります。

会員制サービスの例

では会員制サービスで「定型取引」「定型取引合意」はどの状態を指すか考えてみます。

まず「定型取引」は「会員登録してサイト内の会員向けサービスを利用すること。」、「定型取引合意」とは、「ID/PWを入力して会員制サービスを利用する。」ことにそれぞれなるのではないかと思います。

会員制サービスに会員登録する際、その申し込みのプロセスで会員規約を提示して、「会員規約に同意する。」などのボタンに誘導するのは今やどこのサイトでもきちんとしていると思います。

ですが、毎回サービスを利用するごとに利用者が「会員規約への同意ボタンを押す。」という作業をしているサービスは皆無といっても過言ではないと思います。

その毎回「会員制サービスにログインしてサービスを利用していること。」が会員制サービスにおける「定型取引合意」ではないかと考えられます。

定型約款への同意について

民法第548条の2で、定型約款が契約条件として扱われるためには「定型約款を契約内容とすることに同意していること。」または「定型約款を契約内容とすることを表示していること。」が必要です。ネットショップなどでは取引のたびに「取引条件を記載した利用規約」に同意してもらえば何ら問題ありません。

また、会員制サービスでも「初回登録時」だけでなく「毎回利用時」にも同意してもらうのがベストと考えられます。ただ、初回登録時はともかく、ブラウザなどでID/PWを記憶させて自動ログインするのが当たり前ともいえる現在において、それは現実離れしていると思います。

「定型約款を契約内容とすることを表示していること。」

そこで重要になってくるのが「定型約款を契約内容とすることを表示していること。」になるかと思います。当サイトでは、この「契約内容として表示すること」についてのギミックを設置してあります。

下の画像は当サイトのヘッダー部分です。当サイトではヘッダー部分で「当サイト利用規約が契約条件として適用されること。」を表示している形になります。

当サイトヘッダーでの利用規約への同意

定型約款を契約内容とすることを表示する」場合には、このようにヘッダーやフッターなどに表示しておくのが現実的な対応ではないかと思います。ただし、この場合でも、たとえば「背景と同系色の文字を用いる。」とか、「極端に小さなフォントサイズにする。」といった、利用者にとって読みづらくしたり、わかりにくい場所に掲載するなどはやめたほうがよいでしょう。

ただ、当サイト利用規約本体については、特に「利用規約の変更」に関する条文が定型約款の要件を満たしていません。当サイト利用規約については定型約款として作成するメリットが少ないと判断しているためです。

その代わり、「 テンプレート使用許諾規約」については定型約款の要件を満たすように作成してありますので、ご参考にしてください。

定型約款の変更について

民法第548条の4で、定型約款の変更についての規定があります。

(定型約款の変更)

第五百四十八条の四 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。

一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。

二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

とても読みづらいと思いますので、要約します。

  • 運営者は会員規約を変更することが「1.利用者の利益になるとき。」や「2.契約の内容などからみて妥当な場合。」には、その変更をすることができます。ただし、
  • 変更する場合には変更の効力が発生する時期、変更後の内容を適切な方法で周知しなければなりません。周知していない場合にはその変更は効力を生じないことになります。また、
  • 利用者にとって著しく不利になる変更については認められない。

ということになります。

なので、利用規約の変更についても、「いつでも変更でき、サイト上に掲載すれば完了する。」のような条文ではダメということになります。

契約条件として提示する定型約款のフォーマットを持つ利用規約では、以下のようなルールを守ってその変更の条文を作成する必要があります。

  • しっかりと周知期間を定める。(利用規約で周知期間を定めない場合には、事前に周知期間等を設けることを利用規約で明記する。)
  • 変更後の会員規約の内容と効力発生日などを明記して告知する。
  • サイト上の目立つ場所や会員への電子メールなどで変更についての情報を掲載する。
  • 周知期間や効力発生、同意しない場合の対応などを会員規約で掲載する。

利用規約と定型約款についての私見

ここまで定型約款について、利用規約の例をいくつか取り上げて説明してきました。では結局利用規約を定型約款として作成・提示したほうがいいのか?それとも定型約款の要件を満たさない利用規約で足りるのか?について私見を書いていきたいと思います。

先に結論を述べると、定型約款の要件を満たした利用規約にするか、そこまでは必要はないかは、そのサービスの形態によりけりだと考えています。

ここからはそれぞれのケースを説明していきたいと思います。

利用規約を定型約款として作成すべきケース

定型約款として作成すべきケースには会員制サービスやアプリなどが挙げられます。これらに共通するのは、いちいち利用規約を確認・同意するプロセスを取らずに、かつ継続してサービスを利用する態様だということです。

会員制サービスではブラウザでID/PWを保存→自動ログインするケースが多くあります。この場合には当然いちいち会員規約に同意を促すことは困難でしょう。

アプリでも起動時やメニュー画面などで利用規約を提示するものも見受けます。逆にアプリの利用のたびにポップアップなどで利用規約への同意を求めるケースは私は見たことがありません。

これらのケースでは「利用規約を契約内容とすることを表示する」ことで、利用規約を毎度確認させることなく契約条件に取り入れられるかと思います。

必ずしも定型約款として利用規約を作成する必要がないケース

他方、利用規約を定型約款として作成する必要がないケースについても説明します。このケースには、ネットショップ(定期購入などを除きます。)と情報提供を目的とするサイトが代表例として挙げられます。

これらが利用規約を定型約款として作成する必要がないという結論に至る理由が異なります。以下でそれぞれについて解説していきたいと思います。

ネットショップ

ネットショップで重要な「契約」は商品の売買契約です。売買契約は、購入する意思表示と販売する意思表示によって契約が成立します。その後、売り手は「商品を買い手に届ける。」買い手は「売り手に代金を支払う。」ことの両方が完了することによって完了します。要するに契約の成立から完了まで比較的短いスパンであることが大部分です。

こういった短いスパンで、しかも単発の契約が連続するネットショップの場合には、定型約款として利用規約を作成するよりも、それぞれの売買契約に際してしっかりと「契約条件としての」利用規約に同意させることのほうが重要と考えられます。

利用規約への同意の方法については、「利用規約に同意してもらうには?」で詳しく説明していますのでご参照ください。

情報提供を目的とするサイト

情報提供を目的とするサイトの場合には、「契約条件として提示する内容。」と「利用規約への同意や利用規約の変更のプロセスをしっかりとする。」バランスがとれていないことが定型約款にする必要がないと考える理由になります。

情報提供を目的とするサイトでは「サイト上で取り扱われる情報の取り扱いに関する約束事」が最も大きな利用者の義務になると思います。その義務を守ってもらうために離脱率が高くなる同意までのプロセスをしっかりする必要があるのか、という点を考慮する必要があります。

サービスの分類だけで判断するのは禁物

上で会員制サービスやアプリでは定型約款、ネットショップや情報提供サイトではその必要はないと説明してきました。ですが、私はこういったサービスの分類だけで判断することはできないと考えています。

たとえばサブスク型や定期購入のネットショップではその取引のたびに利用規約への同意をさせているわけではありません。これらのネットショップでは定型約款として利用規約を作成する必要があるのではないかと私は考えています。また、商品がウェブ素材などの場合にも、その使用条件などを定型約款として定めたほうがよいと考えられます。

逆にフリマアプリなどの場合にも、会員制サービスではなく、商品検索と売買契約の履行がメインである場合には、単発の取引の連続という取引形態になると考えられます。よって定型約款として作成するよりもそれぞれの取引条件として個別に同意させる形態のほうが向いている可能性もあるのではないでしょうか。

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