多くのネットショップが存在します。その中の相当数が商品の販売条件などを記載した利用規約を準備していないようです。ここでは商品を販売するウェブサイトやアプリなどで利用規約が必要になる理由とそこで定めるべき条文などを説明します。

ネットショップでも利用規約が必要?

一般的にはネットショップで商品を販売する際の取引条件などは「ご利用ガイド」などで定めているショップが多いと思います。

一般的なネットショップのご利用ガイドでは

  • 支払いについて
  • 配送や送料について
  • 返品や交換について
  • キャンセルについて
  • 領収書や熨斗などについて

といった内容が記載されているケースがほとんどだと思います。

これらが最もトラブルになりやすい場面でもあります。なので、実際に特定商取引法でも決済画面などで取引条件などを詳細に記述するよう定めています。そのため、これらが詳細に書かれていれば、通常の取引が行われている場合には大きなトラブルは生じにくいかと思います。

ですが、実際にトラブルになった時にはご利用ガイドなどだけでは定められていない細かな取り決めごとが重要な役割を果たすことがあります。

ネットショップの取引で取り決めが必要な内容

ネットショップで行われる取引は主に商品の売買になります。通常ネットショップは遠隔地間で取引が行われるので、「遠隔地間で履行される商品の売買契約」ということになります。

遠隔地間の商品の売買契約では、

  • 商品を買う意思表示(購入申込)
  • 商品を売る意思表示(申込の承諾)
  • 商品代金の支払い
  • 商品の発送、配送
  • 商品の受領
  • キャンセル
  • 商品に欠陥があった場合の対応

といったフェーズが存在します。

フェーズごとのリスク

これらそれぞれのフェーズに潜むリスクがあります。それぞれ1つずつ例を挙げると、

  • 購入申込時:以前に不正行為をした者からの申込への対応
  • 申込の承諾:承諾通知を電子メールなどで送信する場合の迷惑メールフォルダ等への振り分け問題
  • 代金の支払い:期日内に支払いがなされない場合の措置
  • 商品の発送、配送:配送先住所が国外だった場合の対応等
  • 商品の受領:購入者が受領拒否をした場合の対応
  • キャンセル:キャンセル事由の確定やそれぞれの送料負担等
  • 商品に欠陥があった場合:どちらの責任でその問題が生じたか、その場合の費用負担等

こんな感じです。

これらすべてを網羅しているご利用ガイドは少なくとも私は見たことがありません。また、トップページでも解説しましたが、購入した商品の所有権移転時期についても記載しておく必要があります。

こういったリスクに対応する規定はお堅い文章になりがちです。そのため、できればご利用ガイドなどでは定めたくないのも事実かと思います。

そういった場合に利用規約という形でリスクを軽減するお堅い条文を書いておくのも一つの解決手段ではないかと思います。

私はネットショップでも利用規約を作成して利用者に提示することをお勧めしています。

ネットショップ向けの利用規約で必要な条文

ここからはネットショップ向けの利用規約で必要となる条文について説明していきます。

商品の売買に際して重要となる条文

まずは、商品の購入申込や配送、キャンセルなど、サイト上の商品の売買に際して必要となる事項です。

1. 商品の購入に際しての留意事項

サイト上で商品を購入する際に、利用者に注意してもらいたい点などを記載します。たとえば

  • 写真や説明文での商品の色合いや質感、サイズなどと実物とが異なる可能性があること
  • 実際の店舗や他サイトでも商品を販売している場合には、商品の在庫状況などがサイト上の表示と異なる可能性があること
  • 時期によって配送が遅延する可能性があること

などは利用者にあらかじめ理解して購入手続きをしてもらう必要があるのではないでしょうか。

2. 売買契約の成立

サイト上で販売される商品の売買契約の成立や決済についての条です。

通常のネットショップでの売買契約は、「購入者がサイト上のシステムに従って購入申込をする。」「販売者がその申込に対して承諾通知を送信する。」ことによって成立します。それをきちんと利用規約で書くことで、契約成立の事実があったことやその時期を特定することができます。

また、購入申込を拒絶する必要に迫られる場合もあります。たとえば、

  • 過去に不正行為をした者からの申込のケース
  • 初回申込で一度に通常では考えられないような高額の申込があった場合
  • たとえば医療従事者向けのネットショップの場合で医療従事者以外の者から購入申込があった場合

などが考えられます。

そういったケースでは申込を拒否する場合があることを明記しておくことでクレームを予防できる場合があります。

商品の所有権は利用規約などに明確な記載がない場合には売買契約の成立時点で購入者に移転します。ですが、私はそれをお勧めしないので、商品の配送に関する条に所有権移転に関する規定を入れます。

3. 代金の決済

商品購入代金の決済方法などを記載しますが、ここでは「当社が定める手段で購入代金を支払う。」などのような定め方でも問題ないと考えられます。

ただ、銀行振込の場合の手数料負担や支払期日などの規定はしっかりと定めておく必要があります。

4. 商品の配送

商品の配送に関する規定では、商品の発送に時間を要する場合や季節にならなければ発送しない場合、販売前予約商品の場合には、その発送時期などを定めます。

また、日本国内にのみ配送する場合や北海道沖縄には配送しない場合には、それらの地域外への配送依頼はキャンセルすることなどを明記する必要があります。

また、以下のように記述しておくことで所有権移転の時期を配送業者に引き渡した時点にすることができます。

商品の所有権は、運営者が商品を配送する事業者に引き渡した時点をもって、運営者からユーザーに移転するものとします。

5. キャンセル

キャンセルの規定については、運営者によるキャンセルの可能性と購入者によるキャンセルの規定を定めます。

運営者からのキャンセル

運営者がキャンセルする理由としては、主に以下の事態が起きた場合が考えられます。

  • 購入者が期日内に商品代金を支払わない場合
  • 購入申込に疑義がある場合で購入者からの返信などがない場合
  • 配送先が配送可能地域外の場合

実店舗や他サイトでの販売をしている場合には在庫状況の変動により購入した商品が別のサイトで売れてしまい、再入荷が難しい場合なども考えられます。

購入者からのキャンセル

購入者によるキャンセルについては「いつまで認めるか」を定める必要があります。

この購入者がキャンセルできる時期についての規定がない場合には特定商取引法の規定により商品の引き渡しを受けた日から8日以内であればキャンセルできることになってしまいます。

通常は商品発送後や決済完了後のキャンセルを禁止する場合が多いようです。

6. 返品や交換、商品に欠陥があった場合の対応

届いた商品の返品や交換等についての規定はネットショップごとで対応が分かれる部分でもあります。

「どちらのせいで返品や交換する状況になったのか?」「返品や交換する場合の費用はどちらが負担するのか?」といった内容をしっかりと定める必要があります。

7. 損害賠償限度額

もし売買契約の履行に際して購入者が損害を被った場合、「どこまでその責任を負うか?」は非常に重要な問題です。

通常は「商品代金を上限として責任を負う。」などとしておきます。ただし、この場合でも、どういった範囲で生じた損害を賠償するのかについても規定しておかなければ際限なく責任を負う羽目になりかねません。

代引きを導入する場合

決済手段として代引きを取り入れる場合には、受領拒否の禁止などを定めておく必要があります。

また、通常のネットショップでは決済完了後に商品の発送をするはずですが、決済に代引きを指定した場合には、購入申込完了後に発送する形になります。この辺りで条文の調整も必要です。

ダウンロード商品を取り扱う場合

コンテンツをダウンロード販売する場合には、商品の配送などの規定が必要なくなります。

ただし、ダウンロード商品の提供方法やダウンロード回数制限(ある場合)などの規定が必要になるほか、購入申込前に商品の使用条件なども明示する必要があります。

その他必要な条文

利用規約の適用範囲や変更、通知手段、個人情報の取り扱い、合意管轄などの利用規約の基礎となる条文も必要になります。

ただし、当事務所の利用規約のように閲覧者向けの利用規約と商品販売用の利用規約を一体化させる場合には、この部分は重複する箇所です。

1. 利用規約への同意、適用範囲など

利用規約への同意や適用範囲などについてです。同意についてはトップページをご参照ください。利用規約の適用範囲には必ず「ご利用ガイド」や「FAQ」など、サイトでの取引に際しての重要事項を記述したページを入れてください。

2. 利用規約の変更について

利用規約の変更に関する規定についてはぞれぞれのネットショップで考え方が分かれる部分だと思います。

「定型約款」として扱うためには事前の周知が必要になります。なので、定期購入などの毎回購入申込をするわけではないネットショップでは定型約款の要件を満たすようにするのがベターかと思います。

ですが、単発の取引がメインになる場合には、その取引の都度利用規約を提示して同意してもらう形でも構わないと思います。その場合には、「任意のタイミングで利用規約を変更できる。」のような定め方でもいいのではないでしょうか。

3. 通知手段

ネットショップにおける通知手段は、申込を承諾する際の承諾通知の送信時や何らかの連絡をする際に重要になる事項です。

なので、ショップドメインからのメールを許可するよう促したり、期間内に連絡がつかなかった場合の対応などを定めておく必要があります。

通知の到達主義を採用している現在において、ネットショップの利用規約では注意が必要な規定の一つといえます。

4. 配送の遅延などに関する免責

自身や災害などにより配送が遅延した場合の免責などをしっかりと定めておくことをお勧めしています。

その他

反社条項や個人情報の取り扱い、準拠法、合意管轄などについての条項も必要です。

ただし、この辺りは情報提供サイト向けの利用規約と共通になりますので、ここでは割愛します。

特定商取引法での義務

消費者と取引するネットショップは特定商取引法や消費者契約法の規制を受けます。

消費者契約法では、「消費者にとって著しく不利になる条項は無効になる。」原則が存在するという話はトップページでも取り上げました。なので、ここでは特定商取引法での規制に絞って説明していきたいと思います。

特定商取引法に基づく表示

一般的に「特定商取引法に基づく表示」といわれる「広告」の規制があります。

広告には以下の内容を記載する必要があります。

  • 販売価格や送料について
  • 代金(対価)の支払時期、方法
  • 商品の引渡時期
  • 申込みの期間(あるとき)
  • 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金額(あるとき)
  • 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  • ソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  • 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
  • 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件があるときは、その内容
  • 有料でカタログ等を別途送付する場合にはその金額
  • 電子メールで広告を送る場合には電子メールアドレス

条件が合えば省略できることも多く、これらをすべて記載する必要はありません。テンプレートも多く存在します。それに従って自身のサイトで実施されている内容を記載していくとよいでしょう。

最新の情報を記載する!!

ただ、気を付けなければならないのは、記載する内容についてはその時点での最新の情報を掲載する必要があるということです。

たとえば、「以前はクレジットカード決済のみだけど、今はコンビニ決済も導入している。」という場合で、「代金の支払い方法」にクレジットカード決済しか書かれていないという状態はNGになります。

購入申込の最終画面での表示

ネットショップで契約の申込をさせる場合、最終確認画面で次の内容を掲載することが義務化されました。

  • 分量
  • 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
  • 代金(対価)の支払時期、方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
  • 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)

表示する場所やボタンの文言にも注意

また、 これらの表示の場所やボタンの文言などについても規制があります。

まずこれらの表示を設置する場所は、

  • 取引の最終画面
  • 注文確定ボタンよりも前(上)

である必要があります。

また、注文を確定するボタンについても「注文を確定する。」「注文する。」「購入申し込みをする。」などのように「これで注文になる。」ことが購入者にとってわかりやすい表示をしなければなりません。

逆に「送信」などのようにわかりにくい表示はNGとなります。

その他の義務や規制

特定商取引法ではそのほかにも、

  • 誇大広告の禁止
  • 不実告知の禁止
  • 商品の支払いがなされている場合で、引き渡しまで1週間以上の期間があく場合には以下の内容を記載した書面の交付
    申込みの承諾の有無
    事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
    受領した金銭の額
    銭を受け取った年月日
    申込みを受けた商品とその数量
    承諾するときには、商品の引渡時期

などの規制があります。

結局ネットショップに利用規約は必要か?

ここまでネットショップで利用者に提示すべき条件と特定商取引法について説明してきました。

ですが、多くのネットショップがご利用ガイドだけで営業している現状もあります。それを見て本当にネットショップ向けの利用規約をわざわざ作成する必要があるのか?という疑問をまだ持たれている方も多いことと思います。

最後にこの疑問にお答えする形でこのページを締めくくりたいと思います。

ご利用ガイドだけでリスクを防ぎきれるか?

ネットショップで利用者に提示すべき条件の説明の中で、思ったより細かな条件を提示する必要があると感じられた方も多いのではないかと思います。

たとえば、ご利用ガイドでは「●日以内にお申し付けください。」などと書いてあったとします。ですが、法的な目線で見てみると、「どの時点から●日以内なのか?」がしっかり定義されていなければあまり意味がない条件ということになります。

そういった細かな点を補う役割のお堅い文章も必要になると私は考えています。それを記載するのがネットショップ向けの利用規約の役割になります。

売買契約に特化した利用規約が必要か?

かといって、商品販売の条件を記載する利用規約が必要か?といえば私の答えはNOです。

たしかに以前は商品販売に特化したネットショップ向けの利用規約を作成すべきとお勧めしていた時期もあります。

ですが、現在は特定商取引法の改正に伴い、取引の最終画面上での取引条件の提示など、取引における安全性が向上しています。

ネットショップ向けの利用規約の役割もその特定商取引法で義務化された表示の補足的な役割にシフトしていると考えています。

他の役割の利用規約と一体化させて問題ない?

なので、取引条件だけを定めたネットショップ向けの利用規約を新たに作成するよりも、閲覧者向けの利用規約などと一体化させて、それに同意してもらうような仕組みでも問題はないと考えています。

当サイトの利用規約もそのような考えに基づいて作成してあります。ぜひご参照いただければと思います。

Tags