利用者にID/PWを付与する会員制サービス向けの利用規約(以降「会員規約」)の内容や注意点、作成時のポイントなどを解説します。

会員規約の特徴

利用者にアカウントを付与することで、その利用者(以降は会員とします。)個人を判別しやすくなり、その会員ごとにサービスを提供することが可能になります。 ユーザーにIDやパスワードを付与する理由はさまざまなものが挙げられます。それこそサイトやサービス、アプリによって千差万別です。主なものを例示しても、

  • ネットショップでポイント制を導入する場合。
  • ダウンロード販売を行う場合。
  • 掲示板・口コミ板などを管理する場合。
  • サイト上で予約等を受け付ける場合。
  • 有料のサービスを提供する場合。
  • オンライン英会話サイト・ダイエットサイトなどオンラインで指導等を行う場合。
  • 顧客に対して作業の進行状況などさまざまな情報をオンラインで提供する場合。

といったように、バリエーション豊富です。 これらの各サービスがすべて同じ内容の会員規約でリスク管理できるわけがありません。 ひとつの例として以下にオンライン英会話サイトについて取り上げてみます。

  • 入会方法
  • サービスを提供する期間
  • 更新の仕方
  • 使用するソフトウェアやカリキュラム
  • 授業料の支払い方法
  • そもそも月額制にするのかポイント制にするのか

などサイトによって本当にさまざまな条件が存在します。 このように会員制サービスではオリジナルの会員規約を作成することが重要になります。

会員規約作成時のポイント

ここからは会員制サービスの会員規約の作成時に特に注意すべき点をいくつか紹介します。

会員規約を定型約款として作成する

会員規約は当サイトの各所でも出てくる「定型約款」に該当するよう作成する必要があると私は考えています。

利用者(会員)が毎回ログインする際に会員規約に同意する機会が少ないことがその理由です。

会員は会員向けサービスを利用する際にIDとパスワードでログインします。ですが、ブラウザにIDとパスワードを記憶させてログイン画面を介さずに利用する場合も多いと思います。

そういう利用形態の利用者に対応するには「定型約款」の仕組みを利用することがベストだと私は考えています。

この場合には、会員規約をサイト上のわかりやすい形で提示し、サイト上に「会員規約が契約条件として適用される。」旨を表示する形になります。

詳しくは「利用規約と定型約款」のページをご参照ください。

有料会員制の場合には特に注意

利用料金を徴収するなど有料で提供する会員制サービスの場合で、消費者向けに提供されるサービスの場合には特定商取引法の「通信販売」に該当するため、その適用を受けます。

有料の消費者向け会員制サービスは「通信販売」
特定商取引法ガイド
より

「通信販売」に該当する場合には以下のような義務が発生します。

特定商取引法に基づく表示

一般的に「特定商取引法に基づく表示」といわれる「広告」の規制があります。 広告には以下の内容を記載する必要があります。

  • 利用料金額について
  • 利用料金の支払時期、方法
  • サービスの提供時期
  • 申込みの期間(あるとき)
  • 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項
  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  • 利用料金以外に購入者等が負担すべき金額(あるとき)
  • 提供されたサービスが種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の事業者の責任についての定めがあるときは、その内容
  • ソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
  • 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件
  • 特別な条件があるときは、その内容
  • 有料でカタログ等を別途送付する場合にはその金額
  • 電子メールで広告を送る場合には電子メールアドレス

条件が合えば省略できることも多く、これらをすべて記載する必要はありません。テンプレートも多く存在します。それに従って自身のサイトで実施されている内容を記載しても問題はないと思います。

最新の情報を記載する!!

気を付けなければならないのは、記載する内容についてはその時点での最新の情報を掲載する必要があるということです。

たとえば、「以前はクレジットカード決済のみだけど、今は他の決済手段も導入している。」という場合で、『「代金の支払い方法」にクレジットカード決済しか書かれていない。』という状態はNGになります。

購入申込の最終画面での表示

また、特定商取引法の通信販売に該当する場合には、契約の申込をさせる場合、最終確認画面で次の内容を掲載することが義務化されました。

  • 分量
  • 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
  • 代金(対価)の支払時期、方法
  • 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  • 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容
  • 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(売買契約に係る返品特約がある場合はその内容を含む。)

有料の会員制サービスでこの表示をする機会は、有料サービスへの申込の際ということになると考えられます。その申込の最終確認画面(このボタンを押せば申込となる最終画面を指します。)でこれらの内容を提示する必要があります。

たとえば月額定額制で毎月クレジットカードから自動決済されるようなケースでは以下の内容も記述しておいたほうがいいと思います。

  • 登録したクレジットカードから決済される旨
  • 毎月決済される日
  • 自動決済を解除する方法と期限

特定商取引法をはじめとする消費者保護に関する法律の考え方の基本となるのは、消費者を惑わせないように、消費者の不利になりえる情報はすべてあらかじめ記述しておくことと私は考えています。

表示する場所やボタンの文言にも注意

また、 これらの表示の場所やボタンの文言などについても規制があります。 まずこれらの表示を設置する場所は、

  • 取引の最終画面
  • 登録申し込みボタンよりも前(上)

である必要があります。 また、申込を完了するボタンについても「申込をする。」「登録」「ユーザー登録する。」などのように「これで確定になる。」ことが利用者にとってわかりやすい表示をしなければなりません。 逆に「送信」などのようにわかりにくい表示はNGとなります。

その他の義務や規制

特定商取引法ではそのほかにも、

  • 誇大広告の禁止
  • 不実告知の禁止
  • 商品の支払いがなされている場合で、引き渡しまで1週間以上の期間があく場合には以下の内容を記載した書面の交付
    申込みの承諾の有無
    事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
    受領した金銭の額
    金銭を受け取った年月日
    申込みを受けた商品とその数量
    承諾するときには、商品の引渡時期

などの規制があります。

その他の法令にも注意

そのほかにもたとえば

  • 事前購入ポイント制を導入する場合:資金決済法(前払式支払手段)
  • オンライン語学教室サービス:特定商取引法(特定継続的役務提供)

といった法令が関わるサービスもあります。 詳しくは「利用規約と法令(サービス概要で留意すべき点)」のページをご参照ください。

会員規約で必要な条文

ここからは会員規約の作成時に必ず必要となる条文について説明していきます。

会員登録や会員資格に関する条文

まずは会員登録や中途退会、運営者による処分、会員資格の有効期間などについての条文です。

1. 会員登録

会員登録(ユーザー登録)する際のルールや登録拒否事由などについて定めます。以下に該当する者からの登録申込は拒否できるように(登録後に取り消しもできるように。)しておいたほうがいいでしょう。

  • 未成年者
  • 反社会的勢力に関係ある者
  • 過去に運営者から強制退会などの処分を受けたことがある者

上記はブラックリスト方式といいます。会員登録を無条件で許可したうえで、たとえば「過去に処分を受けたことがある。」などのブラックリストに該当する者を後から不許可にする方式です。

対して、BtoBの会員制サービスやマッチングサービスの登録事業者の登録時には審査制を導入して申込を審査したうえで登録を許可する審査制もよく採用されます。

どちらの方式でも、会員登録時に必要に応じて本人確認書類や資格証の写しなどの提出を要求できるよう条文を定めておくこともお勧めです。

また、無料トライアル期間などを設定する場合には無料でサービスを利用し続ける目的で入退会を繰り返したりすることを防ぐため、一定期間時間を空けなければ再登録できないよう定める工夫をしておくとよいでしょう。

2. アカウントの設定、管理

会員登録したユーザーのアカウントに関する規定を定めます。 ログインIDに電子メールアドレスやSNSのアカウントを使用する場合には「自身に帰属する」電子メールアドレスやSNSアカウントを使用するよう義務付ける必要があります。そうでなければ、サービスを第三者が利用する可能性が生じてしまいます。

また、通常の会員制サービスでは会員以外に利用させてはならない場合がほとんどです。なので、利用者に自身のアカウントを第三者に開示することがないよう厳重に管理する義務を課します。

その上でアカウントの再設定の手段や第三者使用による損害の賠償などを定める形になります。

会員資格の有効期間、更新

会員資格の有効期間についての条文です。無料の会員制サービスでは無期限としているところが一般的です。

他方、有料で提供するサービスの場合には、月額料金の場合には1か月単位、年額払いの場合には1年単位のように有効期間を設定します。
ただ、たとえば月額制でも、毎月1日(初月は申込日)~末日までの有効期間にする場合と、申込日から1か月間とする場合の2とおりの定め方があります。有効期間が経過した場合には退会扱いとなります。

サービスの有効期間を設定する場合は、以下の内容も定める必要があります。

  • 更新の有無について
  • 更新方法やその手続きをする時期
  • 更新後の有効期間

3. 利用者側からの退会手続き

利用者がサービスから退会する際の退会方法(アカウントの削除方法)について定めます。また、退会によって失うことになるサービス利用上の権利や退会時に発生する義務などについても定めます。

サービスの運営者が退会したユーザーに関する登録情報を削除する場合には「いつをもって削除するのか」といったことも規定しておく必要があります。

4. アカウントの一時利用停止や強制退会

会員が違反行為などをした際の措置を定めます。主にアカウントの利用停止や強制退会などがあります。

これらの措置を講じるケースとしては主に以下のケースが考えられます。

  • ユーザーが禁止されている行為をした場合
  • 運営者からの指示に従わない場合
  • 利用料金の支払いを期間内にしなかった場合
  • BtoC、BtoBの場合には、登録企業が経済的、社会的な信用を失った場合

また、その運営者による処分によって生じる効果についても規定しておく必要があります。

SNSのアカウントをしてログインする場合には、そのSNSから何らかの処分を受けた場合なども明記しておくとよいでしょう。

5. 退会や強制退会後の措置について

会員が退会した場合や強制退会の処分を受けた際に、サービスの利用に係る権利などが残るのか、それとも消滅するのかを規定します。

たとえば、コンテンツをダウンロードさせるサブスクリプションサービスなどで、会員が退会した場合にそのダウンロードコンテンツの継続利用を許可するか?といった内容や、事前購入ポイント制を導入するサービスでは退会時の保有ポイントの取り扱いについてしっかりと取り決めをしておく必要があります。

会員向けサービスの内容や利用条件、禁止事項など

次に、サイトやアプリ内で会員に対して提供されているサービスの内容や利用条件、禁止事項などを定める条文です。

1. サービスの内容について

会員規約の対象となるサービスについて概要を説明します。サービスの概要を説明する条文には直接拘束力が生じることはありません。ただ、利用者がサービス概要を誤認した場合の免責の役割は十分に果たすと考えられます。

また、サービスに(運営者の任意で)変更がある可能性があることや料金改定の方法などについて記載することで、利用者に留意してもらうこともできます。

2. サービスの利用条件について

サービスを利用する際の利用者の義務や留意すべき注意事項などを定めます。この利用者の義務や留意事項などはサービスごとに異なります。

たとえばコンテンツ提供サービスでは、そのコンテンツの利用方法や条件などを明記する必要があります。
また、有料で提供されるサービスでは決済方法やキャンセル、返金などに関する規定を定めます。
オンライン英会話サービスでは予約やキャンセル、無断欠席等に関する規定などが必要になるかと思います。

3. 利用料金や決済について

有料で提供される会員制サービスでは利用料金や決済についての規定が必要です。特に月額定額制や年会費制の場合には、有効期間の定めとの連携が必要です。

また、期間中とでの退会などを想定した利用料金の日割り計算の有無も規定しておくことをお勧めします。

4. 禁止事項、禁止行為について

サービスを利用する際の禁止事項を定めます。 以下の事項はすべてのサービスにおいて共通すると考えられます。

  • 法令に反する行為や公序良俗に反する行為
  • ハッキングやスパム行為
  • 情報転載
  • 著作権などの侵害行為

他にも、サービス独自で禁止しなければならない事柄も定めなければなりません。

たとえばノウハウ提供サービスではそのノウハウを守るため、以下のような行為を禁止する必要があります。

  • そのコンテンツの転載禁止
  • ウェブサイトやブログ等での引用
  • 第三者への開示
  • 新たなノウハウの作成など

SNSサービスでは第三者を誹謗中傷したり営業妨害(商品の悪評を流す。)などを禁止する必要があります。
また、マッチングサービスの場合にはユーザー間で共謀する行為を禁止します。
オンライン英会話サービスなどでは講師へのハラスメント行為やスカウト行為も禁止する必要もあるでしょう。

このように禁止事項はサービスごとに大きく変動する部分です。自身のサービスで「会員にされてはいけないこと。」をしっかりとつぶす必要があります。

また、禁止事項と罰則とを確実に連携させる必要があります。ここでいう罰則は上述のアカウントの一時停止や強制退会などの措置になります。
お客様の利用規約のリーガルチェックをする際、かなりの確率でこの禁止と罰則の連携ができていません。

会員規約作成時には禁止と罰則をしっかりと定めなければ大きなリスクを負うことになります。

5. 免責事項

これもサイトによって異なるものではあります。

ですが、たとえば顧客に対して作業の進行状況などの重要な情報を提供するサイトでは、情報が漏洩してしまった場合の運営者の免責条項をしっかりと設けておく必要があるかと思います。 ユーザーの重要な情報が漏洩してしまった場合でも、以下のようなケースでは責任を負わないよう定めておきます。

  • ユーザーが運営者の推奨する環境を満たさないPCやブラウザでサービスを利用した場合
  • 通常では予期できないような高度なハッキング等による場合

このような「情報」を扱うサイトの場合には、できる限り責任を負う「情報」を制限することでリスクを減らしていくというのがひとつの有効な手段です。

ただし、たとえばオンラインストレージでは、運営者がデータの保管に対して重大な責任を負っています。 そんなサービスで利用者が保管しているデータを喪失させる事故が発生した場合には、よほど予期できないような原因でない限りは運営者が完全に免責されることはありえないと考えられます。

6. 損害賠償限度額

もし会員制サービスの利用に際して会員が損害を被った場合、「どこまでその責任を負うか?」は非常に重要な問題です。 通常は「サービスの利用料金を上限として責任を負う。」などとしておきます。ただし、この場合でも、どういった範囲で生じた損害を賠償するのかについても規定しておかなければ際限なく責任を負う羽目になりかねません。

その他必要な条文

会員規約の適用範囲や変更、通知手段、個人情報の取り扱い、合意管轄などの利用規約の基礎となる条文も必要になります。

私は「閲覧者向けの利用規約」と会員規約を分けて作成するようお勧めしています。分ける場合にはこれらの一部は閲覧者向けの利用規約で対応する形になります。

1. 会員規約への同意、適用範囲など

会員規約への同意や適用範囲などについてです。同意についてはトップページをご参照ください。

閲覧者向けの利用規約を会員規約と分けて作成する場合には、会員規約の適用範囲には必ず閲覧者向けの利用規約を入れてください。

2. 会員規約の変更について

会員規約の変更に関する規定については「定型約款」の要件を満たす必要があります。 定型約款の要件を満たすためには、以下を守ってその変更の条文を作成する必要があります。

  • しっかりと周知期間を定める。
  • 変更後の会員規約の内容と効力発生日などを明記して告知する。
  • サイト上の目立つ場所や会員への電子メールなどで変更についての情報を掲載する。
  • 周知期間や効力発生、同意しない場合の対応などを会員規約で掲載する。

3. 通知手段

会員制サービスにおける通知手段は、サイト上での掲載または会員登録時に会員が指定した電子メールへの送信による場合が多いと思います。

通知の到達主義を採用している現在においては、運営者ドメインからの通知を許可することを義務化するなど、重要な通知が会員に届くようにする工夫が必要です。

その他

反社条項や個人情報の取り扱い、準拠法、合意管轄などについての条項も必要です。

ただし、この辺りは情報提供サイト向けの利用規約と共通になりますので、ここでは割愛します。 閲覧者向けの利用規約を会員規約と別に作成する場合には、閲覧者向けの利用規約のほうだけで定めることも可能と考えられます。

会員規約の作成は当事務所にお任せください!

これまで説明してきたように会員制サービスは非常に多岐にわたります。

「ここのサービスと同じだからこれと同じで著作権対策で文章だけ変えて。」という依頼もたまにいただきますが、実際にヒアリングしてみると同じではなかった、というケースがほとんどです。

当事務所はこの会員規約に分類される利用規約の作成は得意分野です。これまでも多くの会員制サービス向けの利用規約の作成を手掛けてきました。

「ここの条文はどうすればいいだろう?」「あちこちのサイトの条文継ぎはぎでわけわからなくなった。」という感じでご相談いただくケースも多くあります。

悩んで時間を無駄にするより、会員規約の作成についてのお悩みは当事務所にご相談ください。

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