利用規約がなぜ必要なのか?などの素朴な疑問への回答や、利用規約作成の際の注意点や作成、提示の仕方などのノウハウをわかりやすく解説します。

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利用規約作成

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利用規約の基本

私が初めてウェブサービス向けの利用規約の作成を請けたのは10数年前になります。その頃はまだ「ウェブサービス向けの利用規約なんて必要ない。」、「ウェブサービス向けの利用規約なんて全部同じでいいんだ。」という人が多かったように思います。

現在は様々なタイプのウェブサービスが出現してきました。ウェブサービスが多様化したことで、様々な権利義務や契約内容も多様化しています。利用規約はもはや必須なものという認識が定着したと思います。さらに、そのサービスにあった独自の利用規約の重要性も理解されてきたと考えています。

利用規約作成を専門とする行政書士や弁護士もこの10数年で各段に増えました。専門家を含め利用規約の必要性などを説明してくれているウェブサイトも多くあります。「もう利用規約の必要性も基本的な内容も知ってるよ。という方もいると思います。

そのような方でも、経済産業省で令和4年に出した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」に則った形で利用規約の作成の際の基本を説明していきますので、ぜひ最初から読み進めていただけると幸いです。

電子商取引及び情報材取引に関する準則については こちらからダウンロードできます。

利用規約の役割

このページではそもそも利用規約とは何なのか?利用規約どんな役割があるのか?という話をとりあげたいと思います。

利用規約への同意のさせ方

利用規約に同意をしてもらうプロセス構築について説明します。利用者からのクレームを受けるリスクを軽減します。

利用規約と関連する法令について

利用規約の作成時に規制を受ける法令や、サービスの概要によっては許認可が必要になる業態などについて説明します。

ここでは改正民法で新たにできた「定型約款」と利用規約との関係について「何が変わったのか?」解説していきます。

自分で利用規約を作成する

ここからはご自分で利用規約を作成する際の注意点や実際の文章の書き方を解説します。

利用規約作成のポイント

まず、利用規約作成のポイントとして、利用規約のターゲットとなる利用者とそれに向けた利用規約の準備についての説明をします。

利用規約は複数必要?

当事務所ではウェブサイト利用規約と「成果物の使用条件」を分けて定めています。ウェブサイト利用規約には当サイトを訪問してコンテンツを閲覧する閲覧者向けの条文のほか、作成サービスの成立時期や決済、キャンセルなどの取引に関する条件などの規定も含まれています。他方、「成果物の使用条件」には当事務所作成の利用規約等の使用条件を定めています。

閲覧者向けに提示する規定と、売買契約に関する規定、納品した利用規約等の使用条件、これらはそれぞれまったく異なる内容になります。

にもかかわらず当サイト利用規約に閲覧者向けに提示する規定と、売買契約に関する規定を含めている理由については本ページ「役割の違う利用規約を一つにまとめてもよいか?」の「商品販売規約と閲覧者向けの利用規約」をご参照ください。

それぞれの利用者に向けた利用規約が必要になる?

閲覧者にはサイト上の情報の無断転載禁止や保証の否認などが提示すべき条件です。商品の購入者には売買契約の成立時期や代金の支払期限、キャンセルや返品についての規定を提示する必要があります。商品の使用条件については、商品の購入前に提示しておく必要がありますが、購入後に実際に商品を使い始める際に必須となる規定になります。

それぞれ役割の異なる規定を一つの利用規約にまとめて作成するのは(当事務所の利用規約でも閲覧者向けと作成サービスの決済などに関する部分とをまとめているなど、例外もあります。)あまりお勧めしません。

利用規約を一つにまとめると提示する必要のない条文が出てくる?

その理由を当事務所の利用規約の変更を例に説明したいと思います。たとえば利用規約を変更して作成サービスの決済に関する規定に変更する場合、すでに作成が完了して実際に使用しているユーザーからすると、自分に関係のない変更に関するお知らせが届くことになります。逆に作成した利用規約の使用条件について変更をする場合も、作成サービスを利用していない閲覧者には関係のない話です。

同様のことが様々なウェブサービスにも当てはまります。たとえばログインIDとパスワードを設定する会員制サイトでも、会員登録しない利用者に対してID/PWの管理規定を提示する必要はないはずです。

このようにそれぞれの利用者に対して提示する条件が異なります。よって、それぞれの利用者に向けた利用規約を複数作成する必要があると考えています。

利用者をグループ分けする

サービスのリスクを軽減するためには、複数の利用規約を作成することが重要です。そのために自身のサービスの利用者をグループ分けしてみましょう。

グループ分けの例:会員制ネットショップの場合

グループ分けの例としてまず、会員制ネットショップを取り上げてみたいと思います。

パターンI:会員以外でも商品を購入できるネットショップ
会員制ネットショップの利用者

一つ目のパターンは会員以外の利用者も商品を購入できるネットショップです。誰でもサイト上の商品を購入でき、(会員限定商品もある可能性はあります。)会員には配送先自動入力とかポイントの付与(たとえば購入代金の1%分付与など。)などの会員向けサービスが提供される形のショップがこのタイプに該当します。

このパターンでは、

A) サイトの閲覧だけをして会員にもならず、商品の購入もしない利用者。

B) 会員になっただけで実際には商品を買わない会員。

C) 商品を購入したけれど会員にはならない購入者。

D) 会員登録をして商品も購入した利用者。

の4タイプの利用者が存在する形になります。

パターンII:クローズドネットショップ
クローズドネットショップの利用者

2つ目のパターンは会員のみ商品を購入できるいわゆるクローズドネットショップです。登録した事業者のみに卸売りする卸売りネットショップや、タレントのファンクラブ公式サイト(ファンクラブの場合には有料のものが多いかと思います。)などがこれに該当するケースが多いと思います。

このパターンでは、

A) についてはパターン1と同様。

B) 会員になっただけで実際には商品を買わない会員。

C) 会員登録したうえで商品を購入した利用者。

の3者が存在します。

パターンIII:サブスクリプション型ネットショップ

最後に月額利用料や年会費などを会員から徴収する有料会員制ネットショップ、いわゆるサブスクリプションタイプのネットショップの場合です。

定額の会費徴収の仕組みはI、IIのどちらのパターンでもありえるはずです。また、無料会員と有料会員の存在する場合も、有料会員のみしか会員が存在しないケースも考えられます。商品の販売についても、一定数量や金額まではそのサブスクリプションの範囲内で無料お届け、その範囲を超える場合に商品代金が発生するようなネットショップも存在します。

ここに分類されるネットショップは図では表せないほどのバリエーションが存在します。

グループ分けの例:マッチングサービスやフリマアプリの場合

もう一つ、マッチングサービスやフリマアプリなど、同一サービス内に売り手(サービスの提供側)と買い手(サービスの利用側)の二つのグループが存在するサービスを例に挙げたいと思います。

パターンIV:グループごとにアカウントが異なる場合
出会い系サイトの利用者のグループ分類

一つ目のケースは、アカウントが2種類(以上)存在する場合です。わかりやすい例は出会い系サイトです。出会い系サイトは多くの場合、男性と女性で別々のアカウントになっています。

A) 閲覧者(サービスに登録せずに去っていく利用者)。

B) 会員登録した利用者

C) 男性会員or仕事を依頼するor仕事を請ける会員。

D) 女性会員orCと逆の立場の会員

※CとDを総称してBとします。

※CとDは重複しません。(同一人物によるC、Dの重複アカウントは禁止行為として作成します。)

アカウントが複数存在するマッチングサービスの利用者の分類

ほかにも、たとえばお仕事依頼系のマッチングサービスでも仕事を依頼する利用者と、仕事を受け付けて実施する事業者とで異なるアカウントを使用するケースなどが考えられます。

出会い系サイトの場合には同一人物が二つのアカウントを保持することはありません。が、その他の場合には一人の利用者が両方のアカウントを保持する可能性もあります。

A) 閲覧者。

B) サービスに会員登録した利用者。

C) 仕事を依頼するor仕事を請ける会員。

D) Cと逆の立場の会員。

E) CとDのどちらのアカウントも持っている会員。

※ C、Dを総称して会員とします。

※ CとDのアカウントは重複登録可能とします。

パターンV:一つのアカウントですべてのサービスを利用できる場合
フリマアプリの利用者のグループ分類

二つめは、1つのアカウントでサービス内のすべてのグループを管理するケースです。たとえばお仕事依頼系のマッチングサービスで、仕事を依頼することも受託することも一つのアカウントでできる形になります。フリマアプリでも一つのアカウントで売り買いどちらもできるケースが多いと思います。

A) 閲覧のみしていく利用者。

B) 会員登録した利用者。

C) 商品を売る会員or仕事を提供する会員。

D) 商品を買う会員or仕事を依頼する会員。

E) C、Dのどちらの立場でも利用する会員。

※ アカウントを一つ登録することでC~Eのどの立場でもサービスを利用できます。

利用者の行動を把握する

グループ分けするのは、それぞれの利用者がサービス上でどんな活動をするか?どのような立場になるのか?がそれぞれのグループごとに異なるためです。

ほとんどのウェブサイトやウェブサービスでA)のサイト閲覧者が存在します。このグループはユーザー登録や商品の購入などをせず、閲覧だけして去っていくグループです。ただ、インデックス登録していないサイトはこのAのグループは存在しないことになります。

逆に個人のブログや企業の紹介サイトなど、Aのグループしか存在しないサイトやサービスも多く存在します。

次に、例示のすべてのサービスでB)のID/PWを付与されたサービスの会員です。このグループはそのサイトで会員向けに提供されるサービスを利用します。

会員登録せずに商品を購入できるタイプのネットショップの場合には、会員以外で商品を購入するグループが別にいます。

グループごとに必要な利用規約と条文

次にそのグループごとに必要な利用規約とその条文について考えていきます。

ウェブサイトの閲覧者向けの利用規約

まず、Aの閲覧者向けの利用規約がちょっと特殊で後述するほかの利用規約とは態様が異なります。

この閲覧者向けの利用規約については、最初の「そもそも利用規約とは何だろう」のページの「クレームを防止するための役割」のために存在するものになります。つまり「サイト内の契約として利用者に提示・同意してもらう。」という要素よりも、何かあった時の抗弁のために活用するという要素が強くなります。

ただ、「推奨する利用規約への同意のさせ方」の 5.「民法第548条の2の二で定める方法」 で閲覧者に対して利用規約を提示~同意の方法がベターと考えます。というのは、先にも書いたとおり、閲覧者に利用規約の提示→同意をもらうためには、ポップアップの表示など、閲覧者が離脱してしまうような手段を講じる必要が出てくるためです。

その点、この手段だと利用規約の提示と「利用規約を契約内容とする。」という表示をわかりやすい箇所に提示するだけで、特に閲覧者のアクションが増えるわけでもないため、離脱率への影響も少ないと考えられます。

閲覧者向け利用規約の条文構成

ではAの閲覧者のグループ向けの利用規約に記載すべき条項を列挙したいと思います。

  1. 利用規約への同意、適用範囲など
  2. 利用規約の変更
  3. サイトやサービスの概要、利用条件など
  4. 保証の否認
  5. 著作権や知的財産権の所在、使用許諾など
  6. 禁止事項
  7. 通知手段
  8. 反社会的勢力の排除
  9. 個人情報、プライバシー情報の取り扱い
  10. 第三者運営のサービスの利用
  11. サービスの一時的な中断、終了
  12. 損害賠償
  13. 合意管轄、準拠法

この中で特に注意が必要な条文について以下で解説していきたいと思います。

01. 利用規約への同意、適用範囲など

サイトの閲覧には利用規約への同意が必須であることを規定します。ただ、同意の方法としては、上述のとおり明示の同意を得るのは難しいので、 「みなす」方法 を活用するとよいかと思います。

02. 利用規約の変更

定型約款としての要件を満たし、契約条件として利用規約を提示する場合には、「任意のタイミングで利用規約を変更できる。」などの規定の仕方では「民法上では」不十分とされています。ただ、クレームがあった時の対抗手段としての限定的な役割を期待する場合には有効な条文です。

また、ネットショップなどでも購入から再購入までの間隔が広いことが予想される場合など、一見さん相手のサービスの場合にも、果たして民法の規定どおりに告知期間を定めて変更することが現実的かという問題もあります。

03. サイトやサービスの概要、利用条件など

そのサイト、サービスの利用条件などを定めます。これにより「考えていたサービスと違う。」などのクレームをシャットアウトできます。

04. 保証の否認

サービスが利用者のブラウザや通信環境など、運営者の責任ではない事態で正常にサービスができないなどのトラブルなどに対して極力責任を負わないようにする必要があります。サービスが現状有姿で提供されることなどを規定します。

05. 著作権や知的財産権、使用許諾について

情報の著作権や商標、肖像などの権利帰属とその使用許諾についての規定です。この権利帰属と使用条件をしっかり定めることは、自身の権利を守るために重要です。

06. 禁止事項について

情報の転載禁止などはここで定めます。ほかにもハッキングや問い合わせフォームなどからウィルス送信することなども禁止します。

07. 通知手段について

サイトやサービスに関する重要な通知をする手段を記載します。閲覧者向けの通知としてはサイト上への掲載がメインになります。

09. 個人情報やプライバシー情報の取り扱いについて

利用者から提供されたり開示された個人情報やプライバシーに関する情報の取り扱いに関する規定を定めます。プライバシーポリシーがある場合にはそれに基づいて取り扱う旨を定めます。

10. 第三者運営のサービスの利用について

このページ下部の「 第三者運営のサービスの利用規約との整合を図る」をご覧ください。

13. 合意管轄や準拠法について

第一審の裁判を行う裁判所や利用規約がどこの法律に基づいて解釈されるかについて定めます。

コメント投稿を許可している場合の追加条文

コメントの投稿などを許可しているブログやウェブサイトでは、上記に加えて以下の条文を定める必要があります。

  • コメントの投稿に関する禁止事項
  • 禁止事項に違反したコメントの運営者権限での削除について
  • コメントの著作権の帰属や使用許諾(利用者が著作権を留保する場合)
  • コメントの二次利用について

実際にサービスを利用する利用者向けの利用規約

次に実際にそのウェブサービスで提供されているサービスを利用する利用者に対して提示される利用規約に必要な条文などを説明していきたいと思います。

「サービスを実際に利用する。」とは、「運営者とサービスの利用にかかる利用契約を締結する利用者」になります。(ネットショップの場合には「運営者と売買契約を締結する利用者」になります。)

運営者との間で具体的な「契約」という法律行為が発生する形になるので、「契約条件」などを具体的に提示して利用者に同意をしてもらうのがベストと考えられます。

これはつまり利用規約を定型約款の要件を満たすように作成し、利用者に提示するということになります。会員規約や著作物の使用条件を提示する利用規約ではマストの手段と考えるべきです。

ウェブサービスの会員などに向けた利用規約(会員規約)

まず、BグループのID/PWを配布された会員向けの会員規約について考えてみます。

「会員制サービスの利用契約」という観点では、

  • 「いつから会員になるのか?(開始時期)」
  • 「有効期間は?(契約期間)」
  • 「退会の手続きはどうするのか?(中途解約)」
  • 「契約違反などをした利用者にはどう対応するか?(罰則)」

といった内容は絶対に必要です。

たとえば「本サービスの有効期間は、1年間とします。」とする条文が利用規約に定められていたとします。でも、その開始時期が不明瞭であれば、「じゃあ、いつが契約開始日だったの?」という争いが生じてしまいます。

契約の成立や終了などの基本的な内容を定める

以上のような理由で、契約の基本的な内容に関する次のような事項が会員規約の必須項目になります。

  1. 契約の申し込みや成立に関する条項
  2. 契約の有効期間や更新に関する条項
  3. 契約の中途解約や解除に関する条項

もし、有償提供されるサービスでは、上記に加えて以下のような条文も必要になります。

  • 利用料金に関する条項
  • 返金に関する条項
  • 運営者から利用者に対する損害賠償について

利用料金を定めるということは、「その利用料金で利用できる期間も定める必要が生じた。」ということにもなります。

ということは、その開始時期、更新方法も重要になるということでもあります。

サービスの利用条件を定める

サービスの利用条件を定めることも重要です。それらは契約条件として利用者の権利や義務、禁止される行為になります。

必須となる条文としては

  1. 会員として利用できるサービスの内容や概要について
  2. 会員向けに提供されるサービスの利用条件や会員が果たすべき義務について
  3. 禁止事項とそれに違反した場合の罰則について

になります。

サービスの利用条件はより具体的な形で定める形になります。

たとえば、マッチングサービスの場合だと

  • 相手方との取引を誠実に履行すること。
  • 質問や応募してきた他の会員らに不快な思いをさせないよう配慮する。
  • 相手方に不敬があった場合を除いて無視してはいけない。
  • 他の会員からクレームなどが頻発する場合には会員として不適格などとして罰則を課す。

といったことも定めておく必要があります。

その他の必須条文

そのほかにも以下のような条文が必須になります。

  1. 閲覧者向け利用規約への同意
  2. 会員規約への同意、適用範囲
  3. 会員規約の変更
  4. 通知手段
  5. 個人情報の取り扱い
  6. 損害賠償限度額
  7. サービスの中断や終了
  8. 合意管轄、準拠法

ただ、閲覧者向けの利用規約と全く同じ文章ではないものも多くあります。ここではその中で特に重要なものについて説明します。

01. 閲覧者向けの利用規約への同意

当事務所では、会員規約と閲覧者向けの利用規約を分けるようにお勧めしています。その際、閲覧者向けの利用規約はサイトのヘッダーやフッターなどにリンクを設置することもお勧めしています。そうしているのであれば、会員登録時に会員規約と同時に閲覧者向けの利用規約にも同意してもらうよう条文を調整します。

02. 会員規約への同意、03. 会員規約の変更

規約への同意と会員規約の変更に関する条文については、「定型約款」の要件を満たすように作成し、その同意を取り付けるギミックや変更の際のプロセスをきちんと遵守する必要があります。

04. 通知手段

通知手段についても閲覧者向けの利用規約と異なります。多くの会員制サービスでは、登録の際にメールアドレスを入力してもらうと思います。そのアドレス宛に重要通知を送ることが可能となります。よって、電子メールによる重要通知の送信などについての規定が必要です。

電子メールで重要な通知を送信する場合、利用規約には次のような条文を定めます。迷惑メール対策を設定した会員がメールを受領できないトラブルを回避するためです。

会員は、当社ドメインからの通知を受け取れるよう受信設定を変更しなければならない。

06. 損害賠償限度額

特に有償提供のサービスでは、利用者からの損害賠償請求の上限額を定めます。万一その損害賠償を負う場合でもその金額が高額になるのを予防できます。

利用規約で「ノークレームノーリターンで。」とか「いかなる損害についても運営者は一切責任を負わない。」などと定めても、法律で無効とされてしまうので注意が必要です。

ネットショップ向けの利用規約(商品販売規約)

「会員制ネットショップ」のCグループ:「商品の購入者」に向けた利用規約の作成も必要です。

多くのネットショップでは利用規約ではなく、「ご利用ガイド」などで以下のような内容を定めています。

  • ご注文の流れ
  • 決済方法
  • 送料負担
  • キャンセルや返品

基本的な取引ではそれでも十分といえます。が、ご利用ガイドでは対応できない事態が起きる可能性も否定できません。たとえば消費期限の近い商品の配送中に自然災害などで遅延が発生した、などです。その場合、クレーム回避のため運営者が損をする対応をせざるを得ない事態も多くあるはずです。

そのようなときのために商品販売用の利用規約を作成することをお勧めしています。

商品販売用の利用規約で必要な条文

商品販売規約を作成する際に記載すべき事項については以下のような内容になります。

  1. 商品を購入する場合の留意事項について
    a. 決済画面の内容や金額の確認について
    b. 商品ページの説明文や写真などによるサイズや形状、質感などの相違の可能性についての注意喚起
  2. 商品の使用条件や取引条件(ある場合)
  3. 売買契約の成立について
    a. 購入申し込みについて
    b. 申し込みの承諾について、申し込みの拒否事由について
    c. 売買契約の成立について
  4. 代金の決済について
  5. 商品の発送、配送について
  6. 購入申し込みのキャンセルについて
  7. 商品に欠陥や数量不足などがあった場合の対応について
  8. その他
    a. 利用規約への同意や適用範囲など
    b. 利用規約の変更
    c. 通知手段
    d. 損害賠償限度額
    e. サービスの中断や終了
    f. 合意管轄、準拠法

このうち、注意しなければならない条文についていくつか取り上げたいと思います。

01. 商品を購入する場合の留意事項について

ここで特に留意したいのが、注文内容の確認を義務付けることになるかと思います。

私も北海道居住なので基本的に商品ページの「送料無料」の表示はあまり信用しません。(本来的にはこの表示自体問題があると私は思います。)が、利用者に送料などを確認する義務を課すよう利用規約で規定しておきます。

02. 商品の使用条件や取引条件(ある場合)

転売不可のチケットや商用利用不可の商品、デジタル商品などを販売する場合など、商品の使用や転売などを制限する必要がある場合に必須となる事項です。これもご利用ガイドなどで定めるサイトも多いですが、これに違反した場合の対応なども考えるとそれらに対応した利用規約を作成するのが望ましいと考えられます。

08-b. 利用規約の変更について

ネットショップ向けの利用規約においても、「定型約款」に該当するように作成することでリスクの軽減に役立つ場合もあると考えられます。よって、定型約款として利用規約を作成する場合には、利用規約を変更する場合の事前告知期間等をしっかりと利用規約で定める必要があります。

08-e. サービスの中断や終了について

通常はサービスの一時的な中断事由として「自然災害などの発生で損害が生じても責任を負わない。」などのように免責事由として定めます。ですが、商品の配送などを伴うネットショップでは自然災害などの発生で商品の配送などに生じる可能性のある遅延や不能について免責しておく必要があるのではないかと思います。

役割の違う利用規約を一つにまとめてもよいか?

最後に、「役割の異なる複数の規約を一つの利用規約にまとめてもよいか?」という話をしたいと思います。実際に当事務所に利用規約の作成を依頼されるお客様からもよくご相談いただきます。

で、結論から書きますと、ケースバイケースだと考えています。そのケースごとに説明していきたいと思います。

閲覧者向けの利用規約と会員規約

この閲覧者向けの利用規約と会員規約をまとめるのはあまりお勧めできません。なぜなら、提示の対象となるグループが複数なので、難解な利用規約になるためです。

例としては、会員向けの条文は「会員は」が主語になります。閲覧者向けの「保証の否認」などは「利用者は~」が主語になります。これがたとえば「禁止事項」の条には利用者への禁止事項と会員対象の禁止事項がそれぞれ同じ条に存在する形になります。このように本来グループごとに提示する条文が混在して全体に散らばることになります。これは、それだけで読みづらい利用規約が出来上がることを意味しています。

なので、当事務所に実際にご相談いただいたお客様にもそのことを十分に説明します。「それでも~」という方にはひとまとめにした形で利用規約を作成します。

会員規約と商品販売規約

では、会員制ネットショップの会員規約と商品販売規約をまとめられるでしょうか?

会員のみ購入できる会員制ネットショップの場合にはひとまとめにしても構いません。商品の購入に際しては、特定商取引法などで取引に関する重要事項を決済画面などで提示することを義務付けています。それで定めきれない部分を利用規約で定める形になります。会員のみ購入可能なショップであれば、その補足的な条文を会員規約で定めても問題はないと考えられます。

他方、会員以外も購入できるショップでは、その補足事項を会員規約内で定めたとしても、会員ではない購入者は同意できないことになります。

商品販売規約と閲覧者向けの利用規約

逆に会員以外でも購入できるネットショップではできるでしょうか?結論としては取引に関する条文を閲覧者向けの利用規約に組み入れられると私は考えています。

実際に 当事務所の利用規約も閲覧者向けの利用規約と利用規約等の作成請負契約に係る条項をまとめて一つに利用規約として作成してあります。

これらは役割の異なる利用規約同士なので、以前はそれぞれの利用規約に分けることをお勧めしていました。ですが、特定商取引法の改正によって、取引の最終画面での取引条件の提示が義務付けられ、商品販売規約で定める内容がその義務付けられた表示の補助の役割が強くなったため、商品の販売条件に関する規定は「別の役割の利用規約とひとまとまりにしてしまう。」ことも可能になったと私は考えています。

ただし、閲覧者向けの利用規約と商品販売規約と一体で作成する場合には、以下に注意すべきです。

  • 利用規約内に以下を記載する独自の章などを作る。
     商品の販売や商品の使用条件など
     取引に関する細則など
  • 定型約款として成立するための要件をクリアする閲覧者向けの利用規約を作成する。
  • 注意点:利用規約への同意、利用規約の変更
  • 商品の購入から決済画面までの間で利用規約への同意をチェックさせる。
     定型約款への同意の形態でもOK

利用規約をコピーペーストで作成しても大丈夫?

ここまでは「役割の異なる利用規約を複数作成すべきか。」、「それぞれの利用規約に何を定めるべきか。」について説明してきました。ここからはより具体的に条文の書き方について説明していきたいと思います。

そのうえで、おそらく誰もが抱くであろう「類似のサービスの利用規約を参考にしよう。」「いやもう類似サービスの利用規約のコピーペーストでもいいんじゃない?」という命題について考えてみましょう。

「よその利用規約をコピーペーストして問題ないか?」については、「利用規約の条文に著作権が存在しているか?」という問題が深くかかわってきます。利用規約の条文に著作権が認められれば、それを無断でコピー(複製)して使用することは著作権を侵害することになりかねません。

利用規約と著作権に関する裁判所の判断

平成26年7月30日東京地方裁判所判決で利用規約と著作権について判断されています。裁判は、「利用規約をコピーペーストして作成した事業者に、その利用規約内の文言の使用を差し止めする。」というものでした。(判決文は こちらからダウンロードできます。)

その判決文を簡潔に要約すると、

  • 利用規約や約款の条文にはある程度定型文化されたものも多い。その定型文化されたものについては、著作権があるとは認められない。
  • ただ、そのサイトやサービス特有のリスクなどを軽減するため、その利用規約の作成者が創意工夫して作成した条文については、著作権が認められる。

ということになるかと思います。

ここで定型文化された条文とは利用規約で一般的に使用される条文になると思います。

自分が工夫した条文はちゃんと保護される

私は大学教授や弁護士ではないので、この判例について解説をする立場ではありません。が、長年クライアントの難しい利用規約の作成などを手掛けてきました。

「著作権」は「人の創作活動によって創作されたものに対して付加される権利」です。

それを考えると、そのサイトやサービス独自のリスクを軽減するために、その運営者が(おそらく)苦心して作成した利用規約の条文に対しては著作権が存在するという至極まっとうな判断をしているのではないかと考えています。

かくいう私も「このサイト(サービス)ではこういう考えでこういう条文を作った。」という条文が作成に携わってきた利用規約のほぼすべてであります。しかもそれをちゃんと覚えているものです。なので、苦労して作成した利用規約の条文に著作権を認めていることをうれしく思っています。

結論:利用規約をコピーペーストするのはあまりお勧めできない

ちょっと話が脱線しました。類似のサービスの利用規約をコピーペーストで作成する場合には、その条文がサイト独自のものかどうかを確認する必要があるかと思います。そのために必ず複数のサービスの利用規約を見比べてから作成することをお勧めします。

ただ、利用規約を作成する目的は自身のサービスのリスクを軽減することです。そのためにはその利用規約が「自身のサービスの態様にあっているか?」「自身の事業の規模などにもあっているか?」ということが重要になります。

コピーペーストで利用規約を作成するにしても、大手サイトの利用規約を参考にして作成するにしても、その元となるサイトが自身のサービスとほぼ同内容である必要があります。そうでない場合や、運営者の事業規模もほぼ同様でない限りは、 コピーペーストで利用規約を作成したり、大手サイトの利用規約の文章を少しだけ変えるだけで流用することはあまりお勧めできません。

利用規約での文章の書き方

ここからは具体的に自分で利用規約を作成する際の文章の書き方について説明します。

どんな文章でもOK?

当事務所でも「難しい法律の条文みたいな文章で書かなければならないのか?」という質問をお客様からよくいただきます。

それに対する答えは「法律の条文のような文章である必要はありません。普段使用しているような文章で書いても問題ありません。」というものなのですが、これには「ただし」が存在します。利用規約を作成する目的があくまでも「リスクを軽減すること」です。なので、逆にリスクを増幅してしまう文章の書き方ではいけないのです。

下の例文は、お客様から資料として提示いただいた利用規約案の条文です。(どこかのサイトからコピーペーストしたと仰ってました。)文章でリスクが軽減しきれていないと思われるので、悪い例として取り上げさせてもらうことにしました。(若干の修正は施してあります。)

例文:
会員サービスは、会員からの特段の申し出のない限り、会員の有効期限は無期限とし、自動継続されるものとします。

答えは文章の主語が「会員サービスは」と「会員の有効期限は」の2つあることです。

日本語の文法に則って利用規約を作成しなければならない

契約書などでも基本となることですが、「何(誰)は、~~~である。」という形式になっていないと何が言いたいのかわかりにくくなってしまいます。「何が言いたいのか伝わらない。」ということは解釈が多様化してリスクが大きくなってしまいます。

「そんな基本的なこと間違えるほうが悪い。」と思われるかもしれませんが、いろいろなサイトの利用規約を読んでいくと意外にこのミスはよく見受けられます。難しい文章にしようとするとよくこのミスが起こると私は考えています。大手のサービスの利用規約でもたまに見かけるので注意が必要です。

もし上の例を修正するとなった場合、私なら

会員サービスの有効期間は、当社又は会員からの特段の申し出のない限り、無期限とします。

のように修正します。有効期間を無期限とする以上「自動継続」する必要はないので削除します。そのうえで、会員資格の喪失事由を会員からの申し出以外にも「当社」の事情によって喪失する場合もある、としておいたほうが運営者にとって都合がよいのではないでしょうか。

「5W1H」をはっきりと

例文2:
本サービスを利用して商品を購入した会員は、商品代金の他、当社が定める手数料及び配送等にかかる送料を支払うものとします。

この条文は何がおかしいでしょう?文章的には何も変な箇所はなさそうに見えますが・・・・。

答えは商品代金と手数料等を「いつ」「どのような支払い方法で」支払うのかが書かれていないことです。特に「いつまでに」という期限を設定していなければ、「その期限までに支払いがない場合に購入申し込みをキャンセルする」ことができなくなります。

  1. 本サービスを利用して商品を購入した会員は、当社に対して、商品代金の他、手数料及び配送等にかかる送料を商品購入時に支払うものとします。
  2. 前項の代金等の支払いは、当社が定める手段のうち会員が選択した手段によって行うものとします。

私の場合はひとつの条文をあまり長くしない傾向があるので、このように項で分けるようにしていますが、第2項を「なお」書きにして1項につなげても問題ありません。代金等の支払い手段が複数ある場合には2項のような書き方だと便利です。

背伸びして複雑な条文にする必要はない

今まで利用規約のリーガルチェックなどの仕事を多くしてきた中で感じるのは、利用規約の作成となると難しい表現で書こうとするのか、長くて複雑な文章にしようとする傾向が大きいということです。

それでも文法どおりに作成されている分には問題はありません。ですが複雑にしすぎて逆に主語述語がめちゃくちゃになものが多いのが現状です。結局何が言いたいのかわからなくなっている条文も多く見受けられます。

それでは逆に大きなリスクを負ってしまいます。なので、背伸びをせず、まず文法に忠実に書くことを心がけてください。

「他のサイトの利用規約をコピーペーストしたからその辺は大丈夫!」と思っている方も多いと思います。ですが、専門家が作ったもの以外は他サイトの利用規約も過信しないほうがいいのでは?とたまに参考程度に他サイトの利用規約を探す者として思います。

しかも、私たち専門家は、その真贋を大抵すぐに見抜けると思います。ですが、多くの方がそのような特殊技術(?)は持ち合わせていないでしょうから、よその利用規約をコピーペーストの際には自分で利用規約を作成するとき以上に余計に注意が必要だと思います。

結局は法律っぽい文章に・・・?

以上のようなことに気を使いながら利用規約の文章を作成していくと、どうしても堅苦しい印象の文章になってしまいがちです。

また、紛争解決という観点からみても、法律などで実際に使用されている表現や用語を用いることをお勧めします。文章表現の解釈をめぐっての争いがおきにくいためです。

ひとつの例として、私が行政書士になって初めて利用規約の作成の仕事をしたときの話をあげたいと思います。初仕事だったので手伝ってくれた行政書士にその利用規約の「有効期間の満了日より~~日前までに~する。」という表現を「有効期間の満了日の~日前までに~する。」という表現に換えるように薦められました。その理由は、「多くの法律で後者の表現を用いるため、解釈の争いが少ない。」というものでした。

「~より」と「~の」だけの違いですが、厳密にいうとその満了日を含むのか?当事者の意図はどうだったのか?など解釈や判断の違いが生じる可能性があります。争いごとは得てしてそんな「そんな些細なこと」から起こるものです。

利用規約には読みやすさも求められる?

上で利用規約では法律用語を使用したほうがトラブルは少ないと書きました。が、利用規約を利用者にとって読みやすく作成することも同時に重要になってきます。 なぜなら、利用者にサービスの概要や義務などを把握してもらうこともトラブルを回避するのに重要な要素なためです。

この法律的な文面で且つわかりやすい、というバランスが難しいところでもあります。

利用規約の条文の定め方の工夫

これまでは利用規約の作成の際に気を付けたい文章の書き方を説明しました。ここからは実践的に条文の定め方についてのお話をしたいと思います。

具体的?それとも抽象的?

特にネットショップや有料のウェブサービスなどの現金、商品を扱うサービスでは、リスク回避のためにトラブルが起きそうな事案についてできるだけ詳細に、細かく利用規約を作成する必要があります。しかし、詳細に利用規約で定めすぎてしまうと運営者に不利になる可能性もあります。

たとえば、サービス内容を詳細に利用規約で定めた場合、将来的にそのサービス内容などに変更があった場合や微調整などを行った場合でも、その都度利用規約を変更しなければならなくなってしまいます。利用規約の改定の回数が多くなってしまうのもあまり得策とはいえません。

「利用規約の変更」は面倒くさいもの

では、この条文の具体性と抽象性をどのようなバランスにしたらよいのでしょうか。サイト内のサービス内容などは変更したり追加したりする可能性もあります。利用料金なども将来的に変更する場合もあるかと思います。

サービス内容や金額を利用規約内で条文にしてしまうと、サービスの変更や追加のたびに利用規約を変更する必要があります。しかし、それらのサービス詳細や利用料金などを利用規約とは別の場所で定めておいて、利用規約では次のように定めておくと、いちいちサービスの変更や追加のたびに変更する必要はなくなります。

変更の頻度が高いものは利用規約外で定める

本サービスの種類、内容、利用料金等は、弊社が別途定めるとおりとします。

代金の支払い方法についても、「将来的にはクレジットカード決済も導入したい。」などと考えている場合なども次のように定めておけば、決済方法を増やした場合にも同様に利用規約を変更せずに済みます。

購入代金等の支払いは、弊社が指定した手段によって行われるものとします。

これらの規定を設ける場合、ガイドラインや料金表、FAQなどを利用規約の一部として取り扱う形になります。ですが、電子商取引及び情報財取引等に関する準則では、こういったガイドラインやFAQなどは定型約款としては扱われないとしています。なので、利用規約の条文で「ガイドラインなどが利用規約を補完するものとして扱う。」などのように定めておく必要があります。

利用規約の変更については、特に定型約款として作成されたものは利用者への事前告知などが必要になります。極力無駄な変更は避けるように、でも重要な内容は具体的に記述しておきたいものです。

変更の可能性が高いものは全部利用規約外はNG

変更の可能性が高いものは利用規約以外の場所で規定するとよいと今まで書いてきました。だからといって、なんでもかんでも利用規約以外の場所で定めることはお勧めできません。

たとえば、利用者の義務に関する規定など、サービス利用の根本に係る部分を「変更の可能性が高いから。」といって利用規約外で定めて、「利用者がしなければならないことがどんどん増えていく。」のでは、不誠実なサービスと言わざるを得ません。

利用料金の変更を例にして説明すると、「利用者が利用料金を支払う。」という義務自体は利用規約内で定める必要があります。ただ、「利用者が支払う金額」についてはそれによって義務自体が消滅するわけでもなく、利用規約内での重要度も低いので、利用規約外で定めても問題は少ないと考えられます。

利用規約内で定めるか外で定めても問題ないかは、サービスの利用に際してのその条文の重要性と密接にかかわると考えられます。

「みなす」の使い方に注意

例文3:
当社は、本規約の内容を必要に応じ予告なくして改定することができ、会員は、月額サービスを利用する際、その都度、本規約の内容を確認するものとします。改定後に会員が月額サービスを利用した場合には、改定に同意したものとみなします。なお、本ページを確認しなかったことに起因する直接または間接に生じた会員及び第三者の損害について、当社は、その内容、態様の如何に係わらず、一切の責任を負わないこととします。

上の条文は利用上の条文は規約を変更する際の利用者の同意についての条文です。

この条文では、利用者(会員)にこのサイトを利用するたびに利用規約を確認するように定めて、それを怠って「利用規約を変更したなんて知らなかった。」といっても当社は知りませんよ、ということにしています。

また、サイトの閲覧に際しての利用規約への同意についても、

当社は、利用者が当サイトの複数ページを閲覧したことをもって、当サイトの利用規約に同意したものとみなします。

のような書き方もできます。

利用規約への同意や変更についての「みなす」の使用に注意

これらで共通しているのは「(運営者が)ある時点をもってor利用者が何かをしたことをもって~~であることとみなす。」という条文になっていることです。

閲覧者に対しては「同意する」にチェックをしてもらうなどの具体的な同意のためのアクションをしてもらうことが難しいため、ある状態になったことや時期が到来したことをもって「同意したことにしてしまう。」というのがこの条文の意図になります。

ただ、これらの方法では 定型約款への同意や変更に関する基準を満たしません。このことはもうお分かりかと思います。

ですが、契約条件としてではなく、クレームへの対抗手段という役割に限定して利用規約を提示する場合には現段階でも有効な手段といえるかと思います。

「みなす」を使いこなすには法令や他の条文での「根回し」が必要

「みなす。」は、ほかにも

弊社は、本サービスの利用に際して入力されたログインID及びパスワードと本サービスに登録されたものとが一致したことをもって、当該利用が会員本人による利用であるとみなします。

のような使い方もします。

これはなりすましや会員本人以外が端末を操作したことによる第三者利用についての条文になります。この第三者利用についても、「第三者に利用させてはならない。」「アカウントを第三者に知られた場合は再設定などを適切にする。」といったしっかりとした条文がある場合にはじめてこの「みなす。」という条文が意味を持ちます。

そういった適切な条文や法律の規定に基づく根拠がない状態で「~とみなす。」という条文だけがあっても、かえってリスクを増大させる恐れがあります。

「みなす」「みなされる」の主語は誰?

また、この「みなす。」についてはリーガルチェックをご依頼のお客様の準備する規約でもよく見かけます。ですが、とにかく主語を間違えている例が多く見受けられます。

たとえば「ユーザーが本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなされます。」といった場合には、「みなす。」のはサイト運営者で、「みなされる。」のはその申込をしたユーザーです。ですから、上記の条文の主語は「ユーザーは」のはずです。ということは「ユーザーは、本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなされます。」となります。

逆に「みなします。」の場合には「当社は、ユーザーが本サービスへの登録申込をしたことをもって本規約のすべての条項に同意したものとみなします。」となります。

権利と義務、禁止の定め方

利用規約が運営者と利用者との間の契約内容を定めるもの、という観点で見たときに、そのサイトやサービスで「何をすることができるか?(権利)」「何をしなければならないか?(義務)」、「何をしてはならないか?(禁止)」をしっかりと定める必要があります。

私はこれまでリーガルチェックサービスなどでさまざまなサイトの規約を見てきました。ですが、「チェックしてほしい。」という利用規約の多くが、この「権利」「義務」、「禁止」の定め方がしっかりできていないというのが実情です。

この権利・義務・禁止に関する定めがしっかりしていなければ、利用者はサービス利用時に何ができて何ができないかを正確に把握できません。それではサイトの運営上非常に大きなリスクを負ってしまうことになります。

権利と義務、禁止の違い

「できること」を定める権利は条文では「会員は、~~することができる。」「利用者は、~~できる。」のように定めます。

対して、義務は「会員は、~~しなければならない。」「利用者は、~~する義務を負う。」のように定めます。

「禁止」は、「してはならない。」「することを禁ず。」のように定めます。

「義務」と「禁止」には違反した場合、罰則が伴います。逆に権利はたとえば「~することができる。」のにそれをしなかったからといってそれに罰則がかかることはありません。

今まで見てきた利用規約で特に多いのは、この「しなければならないこと。」「してはならないこと。」に対する罰則規定がかけられていない、というものです。もし、ご自分で利用規約を作成した方は今一度それを確認してみてください。

特に「禁止」と「罰則」については、違反行為があっても罰則がなければ意味がありません。罰則規定も利用者を罰則を課してしまうと裁判などでは不利になってしまいます。

権利と義務の定め方

ここまで権利と義務・禁止について説明してきました。それらの定め方には、一定の法則があります。

それは、会員(サイトのユーザー)の行動について定める場合には、「義務」が多くなり、運営者の行動について定める場合には「権利」が多くなる、ということです。

例として会員制サイトへの入会の場合をあげてみましょう。

まず、会員に対しては

本サービスへの入会希望者は、申込方法等について当社からの指示等がある場合、当社からの指示等に従わなければなりません。

次にそれに対する罰則

当社は、入会希望者が入会申込に際して当社からの指示等に従わない場合、当該希望者の入会を拒否することができます。

権利と義務の定め方についてはこの二つで十分すぎるほど説明できていると思います。

サイト内でのルールに従ってもらわなければならないのですから利用者側には「義務」として定め、たとえば罰則規定など運営者側の行為は、「(してもしなくてもいい)権利」として定める、という方法をとると、リスクの少ない規約ができあがるのではないかと思います。

利用規約では「定義」も大切

利用規約のチェックをしていると、今まで使われていなかった用語が突然なんの前置きもなく出てくるのをよく見かけます。

例を挙げると、それまではサービスを利用するユーザーのことを「会員」と書いていたはずなのに突然「甲は~」などに変わっていたり(文脈などから考えても【会員=甲】なのですが)、「本サービス」「当サービス」「本契約」、・・・・など、ひとつの規約でいくつのサービスについて定めているのやら・・・・と思ってしまう例や、突然「本ソフトウェアの使用は~」と切り出されてみたり、読んでいる人間からすると、「いや、まず【本ソフトウェア】ってどれのことだ?」と思う例が本当にたくさんあります。

定義のない用語が出てくる理由

大体が・・というよりすべての例がどこかのサイトや契約書から使えそうな条文を抜き出してきて継ぎはぎして使っているのでしょう。はっきりいってそれではリスクはまったく消せていません。

コピーペーストで作成するなとは言いません。ですが、「せめて利用規約を最初から最後まで読んでからサイトに掲載してください。」というアドバイスしか残念ながらできません。

用語の定義の仕方は2種類ある

利用規約で使用される用語を定義するやり方は主に2種類あります。

独立した「用語の定義」の「条」を作成する。

一つ目は、「用語の定義」という条文を作るやり方です。一般的には利用規約の第1条か第2条あたりで定める場合が多いと思います。

本規約において使用される各用語は、以下のとおり定義されるものとします。

  1. 「当社」:株式会社○○をいいます。
  2. 「本サイト」:当社の運営するウェブサイト「●●●」をいいます。
  3. 「本サービス」:本サイト上で提供される各サービスをいいます。
  4. 「会員」:当社と本サービスの利用契約を締結し本サービスを利用する者をいいます。

大体こんな感じで定義していく場合が多いでしょうか。

条文内で新たに出現した用語に定義を追加する。

二つ目は、文章中で出てきた用語について「次からはこれは【~~】ということにしますよ。」と定めるやり方です。この場合は以下のように設定していきます。

本規約は、株式会社○▲■(以下「当社」という)が運営する「××××」(以下「本サイト」という)において提供される各種会員向けサービス(以下「本サービス」という)をご利用いただく際の、本サービス利用者(以下「会員」という)と当社との間の一切の関係に適用されます。

この条文の場合、この条文ひとつで「当社」「本サイト」「本サービス」「会員」の4つの用語の定義ができていることになります。

私の場合は、下のやり方で定義していく場合が多いのですが、特殊な用語が多い場合には上のやり方で定めていく場合もあります。

その辺はケースバイケースです。

コピーペーストの際は用語の定義に特に注意

この用語の定義については、よその利用規約をコピーペーストしたり参考にする場合には、新たな用語が突然、何の前触れもなく出現する場合が非常に多くなります。その辺は注意するように心がけてください。たとえば入会に関する条文での「希望者は~」などがよく見かけるものですね。

「希望者は~」であれば「本サービスの利用を希望する者(以下「希望者」という)は~」と定めるようにします。このように初回に出てくる用語はきちんと説明するようにしましょう。

法律や他サービスとの調整や整合を図る

利用規約を作成するうえでは法律との調整や整合を図ることも大切です。また、外部の買い物かごシステムや決済システムなどを利用してサービスを提供する場合にはその外部サービスの運営者が提示している利用規約との整合を図ることも必要になります。

ここではそのような利用規約の条文の作成に際して法律や外部サービスとの兼ね合いで注意が必要な条文や入れたほうがいい条文などを説明していきます。

利用規約の条文に影響を与える法律

ここでは、利用規約の条文での定め方に注意が必要な条文をいくつかピックアップします。

消費者関連の法令で無効とされる条文

消費者契約法をはじめとする消費者関連の法律では「消費者にとって著しく不利になる条項は無効になる。」原則が存在します。

たとえば「ノークレームノーリターンでお願いします。」とか「当社は本サービスの利用により利用者が損害を被った場合でも、一切責任を負いません。」「いかなる場合も返金などはしません。」といった条文は「消費者にとって著しく不利」と判断される可能性が極めて高いです。

BtoCのサービスにおいては消費者に対する責任や賠償を一方的に制限する条文にはせず、「運営者の故意や過失による場合」など、一定の条件下では運営者が責任を負うように条文を組む必要があります。

ただし、運営者が責任を負う場合でも、その責任をできる限り制限できるように「損害賠償限度額」などの規定を設ける必要があります。

以前とルールが異なる法律の影響を受ける条文

私が利用規約の作成業務を開始した当初は、旧民法の規定で遠隔地間の取引においては、申し込みの意思表示は到達主義、承諾の意思表示は発信主義がそれぞれ採用されていました。たとえば売買契約の場合には、購入するという意思表示は売主のもとに到着した時点で、承諾の意思表示は売主が発信した時点でそれぞれ効力を持つというものです。

現在は民法が改正され、申し込みの意思表示も承諾の意思表示のどちらも到達主義が採用されています。

たとえば売主からの承諾通知がスパムメールと判断されて購入者のもとに届くことなく削除されてしまった場合、以前は売主が発信した時点が重要だったので、購入者が受領していなくても関係なかったのですが、改正後は、購入者が通知を受領していなければその効力を持たないということになります。

これにより、電子メールで通知をする際には運営者のドメインからの通知を受信できるように設定変更を促す条文を利用規約に設置するのは必須になったといえます。

民法や商法の規定に上書きしなければ不利になる可能性のある条文

民法や商法などでは「両社の合意がない場合にはこういう原則が適用となります。」という作り方の条文がいくつも存在します。その中には取引の実情にはあまり合致していないものも含まれます。

たとえば民法第176条では

(物権の設定及び移転)

第百七十六条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

のように定めています。

売買契約は「買う」という意思表示と「売る」という意思表示によって成立します。よって、民法の規定では、その対象商品の所有権は売買契約の成立時点で買主に移転することになります。

一方、ネットショップやフリマアプリなどでは「売買契約成立後に商品の発送~受領」という取引形態になります。ですが、法律の規定のままだと売買契約成立後から商品の発送までは売主の手元に商品があるにもかかわらず所有権自体は買主に移っている状態になります。つまり、その間は売主が買主の持ち物を預かっている状態ということになります。

取り扱う商品などによっては注意が必要

この状態はたとえばアンティーク品や一点物の高額商品などの売買の際には売主にとって非常に危ない状態になります。もしその「預かっている間」に商品に傷がついたり火事で消滅してしまうと、高額の損害賠償が発生する可能性が高いためです。

そのため、遠隔地間での取引や契約成立から引き渡しまでにタイムラグがある取引の場合には所有権の移転時期を契約書や覚書などで定めるケースがほとんどです。ネットショップなどの利用規約でも同じようにする必要があるかと思います。

第三者運営のサービスの利用規約との整合を図る

整合を図らなければならないのは何も法律だけではありません。現在のウェブサービスでは、買い物かごシステムや決済システム、メール配信システムやアクセス解析など、第三者の運営するサービスを利用して運営しているサービスがほとんどではないでしょうか?

ここでは第三者運営のサービスを利用する場合のそのサービスの利用規約と自身の利用規約との関係の話をしたいと思います。

利用規約で条文を定めなければならない例

ウェブサイトやサービスでたとえばターゲティング広告やアクセス解析サービスなどの第三者運営のサービスを利用するケースも多くあると思います。その場合、「利用の際には自身の利用規約内でこのサービスを利用していることとこの利用規約へのリンクを明記してください。」などとそれらの第三者運営のサービスの利用条件で定められている場合があります。

Google広告やアクセス解析、Amazonアソシエイトなどがその代表例です。そういった第三者運営のサービスを利用している場合は、その旨とそのURLを記載する条文を自身の利用規約の条文として設定する必要があります。

OpenIDや決済サービスなど自社サービスの根幹にかかわる第三者サービスについて

また、外部サービスの運営者からの要請がない場合でも、自身のサービスの根幹になる部分に第三者運営のサービスを使用する場合には、以下のような条文を利用規約に盛り込む必要があります。

  • 第三者のサービスを利用していることへの同意
  • 第三者運営のサービスへの登録などの必要がある場合にはその旨
  • 第三者運営のサービスへの登録や利用についての自己責任原則・免責・保証の否認
  • ユーザーが第三者運営のサービスから何らかの処分を受けた場合の対応
  • 第三者運営のサービスのメンテナンスなどの際の一時的な中断やその場合の免責など

たとえばネットショップでPaypalやStripeなどを利用する場合、動画配信サービスでVimeoなどを利用する場合、オンライン語学教室サービスでZoomやSkypeなどを利用する場合などが例として挙げられます。

また、OpenIDなどを利用して自身のサービスのID/PWとする場合も、その第三者運営のサービスから強制退会などの処分を受けた場合にはサービスが利用できなくなったりします。よって、上記内容は必須といえるかと思います。

利用規約の作成にお悩みの方へ

本サイトでは当事務所での過去の利用規約の作成やチェック、修正の経験をもとに「自分で作成する方法」についてまとめましたので、ぜひご活用ください!

また当事務所では利用規約作成の代行も行っております。

当事務所ではお客様から利用規約の作成代行のご依頼やお問い合わせをいただいた際、以下のようなことに心がけています。

法律用語と読みやすい文章のバランス

難しい法律用語で利用規約を書くことはもしトラブルが発展して裁判などになった場合に解釈の相違が生じにくいので有益です。ですが、そればかりだと利用者にとっては読みづらいことになります。なので、法律用語と利用者にとって難解ではない文章とのバランスに配慮して利用規約を作成しています。

過去のフィードバックをもとに最適なリスク低減の方法の提案

当事務所ではウェブサービス黎明期から利用規約作成に携わってきました。そのため、お客様から様々なフィードバックを得ています。そういったお客様の経験や要望などから当事務所の利用規約も日々進化し続けています。また、そういったフィードバックを基にして、対象となるウェブサイトやサービスでもっともリスクが少ないと思われる利用規約の構成や条文、提示方法などを提案するコンサル業務も作成サービスに含まれています。もちろんお客様のご要望を優先します。(明らかに法令に反すると思われる場合を除きます。)

はじめての方にも安心できるよう配慮

これまでも「利用規約を準備しなきゃならないのはわかるけど、何から始めていいかわからない。」という方も多くいらっしゃいます。当事務所では初めての方にも安心できるよう、お問い合わせいただいた際やZoomなどで打ち合わせをする場合、極力法律用語を使わずにわかりやすい単語や表現を使用して説明するよう努めています。

利用規約のことでお悩みでしたらぜひ当事務所にお問い合わせください。

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